4.脆性破壊|材料強度学
脆性破壊とは
脆性破壊とは、破壊に至るまでにほとんど塑性変形を伴わずにパキっと割れてしまうイメージです。亀裂は高速に伝搬し、破面は平滑なのが特徴です。ガラスや陶器などの脆性材料はもちろん、通常は延性破壊を起こす金属材料でも低温では脆性破壊を起こすこともあります。
脆性破壊が原因となって起こった事故として有名なものは、第二次世界大戦の最中、アメリカ合衆国で大量に建造された規格型輸送船”リバティー船”の話が有名です。
脆性破壊の破面の特徴
脆性破壊を起こした破面は非常に平滑なのが特徴です。ミクロ的にはリバーパターンと呼ばれる模様が観察されます、マクロ的にはシェブロンパターンと呼ばれる模様が観察されます。以下に破面の写真を掲載しているホームページを紹介します。参考にしてください。
原因
脆性破壊を起こす原因としては、その材料が脆い性質であるということ以外に、引張り応力、切欠き( 応力集中部位)の存在などの要因が重なって発生します。脆性材料は切欠きに対する感度が非常に高いため、引張り応力を受ける部材に脆性材料を用いる場合、その切欠きの大きさが問題になります。
ちなみに脆性材料を使用したつもりはなくとも、脆性破壊を起こす場合があります。それは主に低温環境での使用によるものです。常温で延性を示す鉄鋼材料でも低温環境では脆性に遷移することはよく知られています。また、寸法効果と言って板厚の大きなものも脆性破壊を起こす場合があります。
対策
対策としては、大きな引張応力を受ける構造部材に脆性材料を採用しないということが先決です。一般に脆性材料は圧縮には比較的強いですが、引張には弱いという性質があります。
仕様上、脆性材料を使用する必要がある場合、あるいは非常に低温環境で使われることが想定される場合などは、脆性破壊に対する強度についてしっかり検討する必要があります。
脆性破壊に対する強度を評価する方法としては、応力拡大係数やエネルギー解放率、あるいは塑性範囲が広い場合にはJ積分などの破壊力学的パラメータを用います。それぞれのパラメータをFEMを用いて解析的に求め、実験で求めた材料固有の破壊靭性値と比較することで破壊に至るかどうかを判断することができます。この辺の詳しい話は『有限要素法のモデル化技術と応用解析 』161ページ以降に詳しく書かれていますので参照ください。