2.破壊の形態|材料強度学
機械装置の破損原因
機械装置の破損原因を分類したものが図2-1です(参考文献:溶接構造物の疲労破壊と疲労強度因子(1))。図より、破損の原因としては疲労に関わるケースが最も多く、全体の80%弱もあることが解ります。また同文献によると静的破壊に分類されているものでも、実は疲労破壊が主たる原因で、静的破壊は2次的に発生しているケースも多く含まれているとのことです。したがって、全体のおよそ90%が疲労に関係した破損と考えられます。その他の10%程度が、応力腐食割れ・遅れ破壊、腐食・破裂、静的破壊となります。
一方、今度は破損を部位別に分類すると、90%が応力集中による影響です。残り10%は構造自体の強度不足やその他腐食などの影響と思われます。またこういった破損事故は全体の80%がメーカ側の強度検討不足が原因となっています。残りはユーザ側の使い方やメンテナンス不備などが原因と考えられます。
つまり、これらのデータから言えることは、機械装置を設計する場合には、特に疲労強度(主には応力集中部)に関して十分検討する必要があるということです。逆にこれをしっかり検討できれば、破損の不具合を大幅に減少させることができるはずです。
破壊形態
破壊とは材料が分離してしまう現象をいいます。その破壊の形態には種々あり、主には延性破壊、脆性破壊、疲労破壊、応力腐食割れ、クリープ破壊などがあります。図2-1における静的破壊に分類されているものの中には、延性破壊、脆性破壊、クリープ破壊などが含まれると考えられます。
CAEを用いて材料の強度を評価する場合、どのような破壊形態を問題にするかにより、モデル化の方法が異なります。また破損品の分析のためにCAEを用いる場合にも、単なる外力の影響だけではなく、周囲の環境や温度等によっても強度が影響されるため、破損品がどのような環境で使われていたのかということも踏まえた上で、その破壊形態を推定して解析モデルに織り込む必要があります。場合によってはCAEでは検討できない問題もあるかもしれません(応力腐食割れなど・・)。いずれにしても、部材の強度を的確に評価できるようにするためには、これらの破壊形態に関する理解は不可欠です。
次項より、これらの破壊形態の特徴や強度の評価方法などについて説明していきます。