07-3.ランダム応答解析|動解析入門
評価方法
ランダム応答解析での評価方法は大きく分けて以下の3つのパターンがあります(他にもあるかもしれませんが代表的なものとして紹介します)。
(1)応答PSDのレベルを評価
振動試験などでは、応答加速度のPSDレベルを基準以下にするように要請されている規格もあります。
(2)疲労強度を評価
ランダム応答解析によって得られる応力の標準偏差σ(RMS応力)からマイナー則を用いて疲労寿命を評価します。疲労解析にもいろいろな手法があると思いますが、1σ、2σ、3σの応力値を用いる方法が簡単です。
この手法を用いた事例は下記リンク先の資料が参考になります。
http://ansys.jp/news/images/pdf/vol2_issue3_2008/AN-Advantage_vol2_Iss3_08_15.pdf
上記リンク先の方法と考え方は同じですが、疲労寿命を直接求めるようにすると下式となります。
・・・(7-3-1)
T:疲労寿命時間、ν0+:等価振動数、N1:1σによる損傷サイクル数、N2:2σによる損傷サイクル数、N3:3σによる損傷サイクル数、P1:±1σの範囲に入る確率(0.683)、P2:±1σ〜±2σの範囲に入る確率(0.271)、P3:±2σ〜±3σの範囲に入る確率(0.0433)
(3)応答のピーク値を評価
構造強度を評価する場合、疲労とは別に一発で破損する(あるいは曲がってしまう)ことが無いように設計する必要があります。これは主に応答のピーク値を問題にします。ランダム応答解析による統計的な考え方を用いれば、基準を超える過度な応答が発生する確率を限りなく0に抑える検討を行うことができます。これにより破損の確立を完全に0にすることは困難ですが、少なくとも破損の確立をコントロールすることができるようになります。
この評価には前項で説明した”単位時間当たりに閾値αを超える回数”の考え方を用います。少しややこしいので次の例題で説明します。
<応答ピーク評価の例題>
等価振動数ν0+において、繰り返し数N回に至る間に確率Pで破壊応力σDを超えないためには、応力の標準偏差σをどの程度までに抑える必要があるか?
N回に達するまでの時間をTとした時、それまでにσDを超える確率は近似的にν0+Tで表されます。そしてこれは1-Pとイコールですので、
・・・(7-3-2)
ここでTは
・・・(7-3-3)
ですので、式(7-3-2)に代入します。
・・・(7-3-4)
ν0+について整理すると
・・・(7-3-5)
ここで、前項で説明した式(7-2-14)に対して式(7-2-15)と式(7-3-5)を代入し、今回はα=σDということを考慮すると、
・・・(7-3-6)
両辺の自然対数を取ります。
・・・(7-3-7)
応力の標準偏差σについて解いていきますと、最終的にσは下式となります。
・・・(7-3-8)
具体値で確認してみます。
回数Nは金属材料の疲労限を想定して10^7とします(この装置の生涯に亘る応力の繰り返し回数も10^7を超えないとします)。破壊応力σDは降伏点や引張り強さなどいろいろな考え方がありそうですが、ここでは降伏点として300[MPa]を想定します。信頼性の確立Pは99.99[%]とします。
これらを式(7-3-8)に代入してσについて解くと、σ=42.2[MPa]となります。
これにより、応力の標準偏差σを42.2[MPa]以下に抑えておけば、等価振動数で10^7回の荷重が繰り返されても99.99[%]の確立で降伏点300[MPa]を超えないということが予測できます。σD、N、Pをどの程度に設定するかは各社のノウハウですので、ここで言及することはできません。市場での使われ方、どこまで強度を保証するのか、コストはどこまでかけられるのか、等々を考慮して妥当な値に決める必要があります。