05.過渡応答解析|動解析入門
過渡応答解析とは?
過渡応答解析は時刻歴応答解析とも呼ばれ、時間的に変化する挙動を解析する手法です。したがって時間軸で解析が実行されます。入力荷重としても時間的に変化する動的な荷重を定義することができますので、実現象に近い状態を解析で再現させるができます。応答としては各節点における変位、速度、加速度、またそれにより生じる要素の応力などが時系列データとして得られます。
前項の周波数応答解析と同様に過渡応答解析においてもモード法と直接法があります。それぞれの特徴は前項で書いた内容とほぼ同じです。それ以外の特徴としては、直接法の過渡応答解析で非線形解析ができるということが挙げられます。よって、材料が塑性する(材料非線形)とか、変形が大きい(幾何学的非線形)とか、接触を考慮する必要がある(境界非線形)とかの場合は直接法の過渡応答解析を採用する必要があります(※)。ちなみに周波数応答解析(モード法、直接法)とモード法の過渡応答解析は線形解析が前提となります。
(※)直接法以外に陽解法を用いるという選択肢もありますが、本講座の振動問題を取り扱う分野というテーマから外れそうなのでここでは説明しません
関連技術メモ
過渡応答解析の用途
過渡応答解析では時間軸での解析ができるということで、解析対象の実稼働状態での挙動をそのまま解析で再現させたいときに用いられます。
解析例
Abaqusチュートリアルの『過渡応答解析(モード法)』の項で解析した事例を紹介します。
解析条件
- プレート寸法:300×50×1.2
- 材料:鉄鋼材料を想定(E=210GPa,ρ=7.85e-6kg/mm^3,ν=0.3)
- 境界条件:片側の端部を完全固定
- 固有値抽出範囲:1〜500Hz
- Z方向に初速度1000mm/s
- 減衰:1〜500Hzの範囲で減衰比0.05
この事例では動的な荷重を与える代わりに、モデル全体に初速度を与えてその後の構造側の挙動を解析します。
加速度応答
下図はプレート先端の加速度波形です。このように過渡応答解析では解析結果として時系列の波形を得ることができます。
アニメーション
全体の挙動は下図のアニメーションで確認ください。