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L字プレート|Abaqusチュートリアル

(Abaqusバージョン:Abaqus 6.9 Student Edition)

シェル要素を使った解析例としてL字プレートの線形静解析を行います。この事例は以前にNASTRANの解析事例で紹介したものです。こんな単純な構造の解析ですが、解析的な事情を学ぶには良い題材です。本項ではまずモデルの作成方法について説明します。次項以降で考察や非線形解析への展開について説明していきます。

L字プレートの線形静解析

<目次>

概要

今回モデリングするL字プレートの形状と解析条件は以下の通りです。

形状と解析条件

  • 寸法:長辺100mm、短辺50mm、幅50mm、厚さ1.2mmmのL型プレート
  • 材質:鋼を想定して、弾性率E=210[GPa]、ポアソン比ν=0.3
  • 荷重:長辺側のエッジを500Nで引張る
  • 拘束;短辺側のエッジを完全固定

パートの作成

シェル要素を使う解析ではサーフェスのみのモデルを作成します。、3Dのソリッドモデルを作成する手順とほとんど変わらず、"断面をスケッチして押し出す"手順で簡単に作成することができます。

パートの作成

モデルツリーパート上で右クリックして現れるメニューにおいて作成をピックします。ちなみにパートダブルクリックすることでも同じ操作をすることができます。

以下のパートの作成ダイアログにより、どのような形状作成するのかを定義します。ここではシェルモデル用のサーフェスを作成しますので、モデリング空間:3次元、タイプ:変形体、形状:シェル、タイプ:押し出し、近似サイズ:200を入力します。形状でシェルを選んだ以外はデフォルト値です。ここで名前もPart-1というデフォルト値を使用していますが、アセンブリ構成なった時などに部品の識別が容易になるように個別に名前を設定することもできます。

設定が終わりましたら、続けるのボタンをクリックします。これによりビューポートはグリッドが表示されたスケッチ画面に切り替わります。

断面のスケッチ

L字プレートをスケッチします。まず@に示す"直線の作成:結合"をクリックします。これにより連続した直線を描くことができます。L字になるようにA、B、Cの順にビューポート上をクリックしてください。最後にDESCキーにより直線の作成コマンドを終了します。

次に寸法を追加します。L字の短辺50mm、長辺100mmのプレートを作成します。

@寸法の追加アイコンをクリック。A寸法を追加する辺をクリック。寸法線が引き出されますので、B適当なところでビューポート上をクリック。C寸法値を入力して[Enter]キー。この操作を寸法を追加する辺に対してすべて行います。今回の場合矩形ですので、2辺に対して行います。

すべての寸法の定義が終わりましたら、プロンプトエリアの赤い"×"ボタンをクリックします。これは寸法定義の作業をキャンセルするという意味です。Ecsキーでも同じ効果です。

そうしますと、下図に示す様に断面をスケッチする作業の指示がでますが、本チュートリアルではこれ以上の形状は定義しませんので完了ボタンをクリックします。

奥行きの定義

上記の完了をクリックすると現れる"ベース押し出しの編集"ダイアログにおいて、奥行きに50と入力してOKボタンをクリック

下図のように3Dモデルが完成しました。

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材料の定義

モデルツリーにおいて材料特性の項目の右クリックメニューから"作成"を選択(材料特性の項目をダブルクリックでも可)。

上記操作によって現れる"材料特性の編集"ダイアログにおいて、名前に"steel"と入力します。これは例であり、名前は何でも構いません。複数の材料を使用するときにちゃんと識別できればよいです。JISの材料名を入れてもよいかもしれません。さらに"材料特性の編集"ダイアログにおいて、メニューの機械的/弾性/弾性を選択します。

そうすると、材料挙動のリストに"弾性"の項目が追加されて、下側に"弾性"についての定義ができるようになります。ここで構造解析で使用するYoung率(弾性率)とPoisson比(ポアソン比)を入力します(参考:材料力学講座/弾性率)。単位系は整合性が取れていれば何でも良いですが、ここでは力としてmNを用いる単位系を使います。(参考:整合性の取れた単位系)

入力が終わりましたら、OKボタンをクリックします。モデルツリーの材料特性の項目を展開すると、今定義した"steel"が追加されていることが確認できます。

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要素特性の定義と割り当て

要素特性の定義

モデルツリーにおいて、要素特性の項目の右クリックメニューから"作成"を選択(要素特性の項目をダブルクリックでも可)。この時、自動で特性モジュールに切り替わります。

"要素特性の作成"ダイアログにおいて、カテゴリでシェルタイプで均質を選択して、続けるボタンをクリックします。名前はとりあえずデフォルト値を用いますが解りやすいように変更しても構いません。

"要素特性の編集"ダイアログにおいて、シェル厚に1.2を入力、材料特性で先ほど定義したsteelを選択OKボタンをクリックします。

要素特性の割り当て

上記で定義した要素の特性をサーフェスモデルに対して割り当てます。モデルツリーにおいて、パート、Part-1をそれぞれ展開します。Part-1の下位にある要素特性割り当てという項目の右クリックメニューから"作成"を選択します。

プロンプトエリアに"要素特性を割り当てる領域を選択してください"と出ますので、この状態でビューポート上のサーフェスモデル(Pert-1)をクリックします。短辺と長辺の2面をshiftを押しながら選択します。正しく選択されましたらプロンプトエリアの完了ボタンをクリックします。

上記操作で現れる"要素特性割り当ての編集"ダイアログの要素特性で、先ほど定義したSection-1を選択して、OKボタンをクリックします。これによりL字プレートのサーフェスモデルに材料特性をセットした要素特性が割り当てられました。

要素特性が割り当てられますと、下図のようにモデルの色が灰色からアクア色に変化します。

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法線方向の割り当て

法線方向の割り当てにより、サーフェスの裏表を定義します。サーフェスモデルにシェル要素を作成する場合、その裏表をしっかり定義しておかないと、結果評価の際に混乱や間違いの原因となってしまいます。

法線方向を定義するには、特性モジュールにおいてメニューから割り当て/法線を選択します。

ビューポートに現在の設定状況が色で表示されます。ここで、ブラウンが表、パープルが裏となっています。プロンプトエリアにはブラウン=正、パープル=負と表示されていますが、これは法線ベクトルの方向としての表現となっていますが同じ意味です。サーフェスの表・裏と表現した方が解りやすいのでここではそのような表現としました。

作り方にもよると思うのですが、この例ではL字の内側が表になっています。ここでは外側を表に設定したいと思います。プロンプトエリアには"法線方向を判定する領域を選択してください"と指示がありますので、Shiftを押しながらL字の長辺、短辺を選択して完了ボタンをクリックします。

下図のようにサーフェスの表裏が反転されました。完了ボタンを押すか、Escボタンを押すことで作業を終了します。

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モデルのアセンブリ

まずはアセンブリにおいてパートのインスタンスを作成します。モデルツリーでアセンブリを展開してインスタンスの項目上の右クリックメニューから"作成"を選択します。この時、自動でアセンブリモジュールに切り替わります。

"インスタンスの作成"ダイアログにおいて、インスタンスタイプをディペンデントに設定してOKボタンをクリックします。

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解析ステップの定義

解析ステップの作成方法

モデルツリーにおいて、ステップの項目の右クリックメニューから"作成"を選択します。この時、ステップモジュールに自動で切り替わります。

上記操作で現れる"ステップの作成"ダイアログにおいて、プロシージャタイプ:線形摂動Static,Linear perturbationを選択して、続けるボタンをクリック。名前を適宜変更しても構いません。

上記操作で現れる"ステップの編集"ダイアログはデフォルトをそのまま受け入れてOKボタンをクリックします。

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荷重条件の定義

モデルツリーにおいて、荷重の項目の右クリックメニューから"作成"を選択します。この時、荷重モジュールに自動で切り替わります。

上記操作で現れる"荷重の作成"ダイアログにおいて、ステップで先ほど作成したステップ名(Step-1)、カテゴリで機械的、タイプでシェルエッジ力を選択し、続けるのボタンをクリックします。名前を適宜変更しても構いません。

次にビューポート上で荷重を設定するエッジを選択します。@に示すエッジをクリックして選択し、A完了ボタンをクリック。

上記操作で現れる"荷重の編集"ダイアログにおいて、分布:均一力:一般方向:編集ボタンにて最初のポイント(0,0,0)、2番目のポイント(1,0,0)と入力、つまりx方向ベクトルを定義。大きさ:500000/50、と入力します。荷重の大きさは500[N]をmN(ミリニュートン)単位で入力しています。さらに、シェルエッジ力は単位長さ当たりの荷重であるのでエッジ長さ(50mm)で割っています。また、これは線形解析には関係ありませんが、力は次の単位領域で定義:原形領域、一番下の"回転に従う"のチェックを外します。

ここで、荷重の方向を定義する必要があります。上図ダイアログではすでに設定してありますが、ベクトルの編集をクリックします。

荷重はL字の長手方向に設定したいので、下図のように@、Aの点を順にクリックして方向ベクトルを定義します。方向が合えば別の点をクリックしても構いません。

またさっきのダイアログに戻りますので、OKボタンをクリックして荷重条件の定義を終了します。

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境界条件の定義

境界条件の定義

荷重を設定した側と反対側の短辺のエッジを完全拘束します。モデルツリーにおいて、境界条件の項の右クリックメニューから"作成"を選択します。

上記操作で現れる"境界条件の作成"ダイアログにおいて、ステップ:Initialカテゴリ:機械的タイプ:対称/反対称/完全固定、を選択し、"続ける"ボタンをクリック。名前を適宜変更しても構いません。

モデル上で@境界条件を設定するエッジを選択、Aプロンプトエリアの"完了"ボタンをクリックします。

上記操作で現れる"境界条件の編集"ダイアログにおいて、一番下のENCASTRE(U1=U2=U3=UR1=UR2=UR3=0)にチェックを入れます。これはすべての自由度が0にするという意味です。OKボタンをクリックし、境界条件の定義を終了します。

<補足>
Uは並進変位を表し、URは回転変位を表します。後に続く数値は方向を表し、1,2,3はそれぞれx,y,zを表します

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モデルのメッシュ分割

メッシュ分割はモデルツリーの右クリックメニュからは直接行うことができません(いろいろ設定があるため)。今回はアセンブリのインスタンスを作成するときにディペンドを選択したので、パートに対してメッシュ分割を行います(それ以外の方法については別途説明します)。

メッシュモジュールへの切り替え

まずはモデルツリーにおいて、パート/Pert-1まで展開し、メッシュという項目が表示されるようにします。次にメッシュ(空)の項目の右クリックメニューからコンテキストの切り替えを選択します。コンテキストの切り替えとはモジュールを切り替えることと同義だと思います。

この操作によりモジュールがメッシュに切り替わります。ここでモデルの色がピンク色に変わったと思いますが、これは現在割り当てられているメッシュコントロールのテクニックに"フリー"が選ばれていることを示します(次項で説明)。シェルメッシュを作成する場合にはフリーメッシュがデフォルトになります。ちなみにメッシュ分割ができない形状の場合はオレンジ色になります。

メッシュコントロールの設定

メッシュコントロールとはどのような形状の要素をどのように作成するかを決める設定です。下図に示すメッシュコントロールアイコンをクリックします。

メッシュコントロールを設定するサーフェスを選択します。モデル上で@、Aサーフェスをクリックして選択、このときShiftを押しながらクリックすることで複数のサーフェスを選択することができるようになります。Bプロンプトエリアの"完了"ボタンをクリックします。

下図に示す"メッシュコントロール"ダイアログにおいて、要素形状:4辺形支配テクニック:フリー、アルゴリズム:Advansing frontを選択します。これがデフォルですので、確認だけになるかと思います。テクニックの項目の横に色が示してありますが、これが先ほど説明したモデルの色になります。フリーはピンク色ですね。最後にOKボタンをクリックしてメッシュコントロールの設定を終了します。

要素タイプの割り当て

さて、この辺から計算力学に関する知識がないと訳が解らなくなりがちなのですが、とりあえず説明していきます。要素に関する詳細は別途説明します。

下図に示す要素タイプの割り当てアイコンをクリックします。

メッシュコントロールのとき選択した時と同様の手順で要素タイプを割り当てるサーフェスを選択します。

上記操作で現れる"要素タイプ"ダイアログにおいて、要素ライブラリ:Standardジオメトリ次数:線形4辺形のタブで低減積分のチェックを外すの設定します。これはS4という要素タイプになります。線形にも非線形にも汎用的に使える要素ということで今回はS4を採用しました。詳しくは要素の性質2を参考にしてください。

最後にOKボタンをクリックして要素タイプの設定を終了します。

シードの定義

シードとはメッシュをどのようなサイズで分割するかということを決める設定です。モデル上に予めメッシュの基準点となる種(シード)をばらまきます。

下図に示すパートのシードアイコンをクリックします。

上記操作で現れる"全体シード"ダイアログにおいて、近似全体サイズを5と入力します。メッシュサイズは解析精度を決める上で重要なファクターですが、student editionでは1000節点以下との制限があるのでこの位が限界かと。

適用ボタンをクリックすると、下図のようにエッジ上に点が表示され、どのくらいのサイズなのかをモデル上で確認することができます。よければキャンセルボタンをクリックします。OKボタンは設定を適用させた上でダイアログを閉じます。適宜使い分けてください。

メッシュの作成

やっとメッシュを作成する準備が整いました。下図に示すパートのメッシュアイコンをクリックします。

プロンプトエリアに"パートをメッシュ分割しますか?"と聞いてきますので、"はい"をクリックします。

メッシュ分割が完了すると下図のようにモデルで確認することができます。

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解析ジョブの作成と投入

解析ジョブの作成

解析モデルが完成したので、解析ジョブを作成して計算を実行してみましょう。モデルツリーにおいて解析を展開してジョブの項が表示されるようにします。ジョブの項の右クリックメニューから"作成"を選択します。この時、ジョブモジュールに自動で切り替わります。

上記操作で現れる"ジョブの作成"ダイアログでジョブの名前を入力(デフォルトはJob-1)、モデルを選択(Model-1)します。デフォルトを受け入れる場合はそのまま、続けるボタンをクリックします。

続く"ジョブの編集"ダイアログでは色々設定はありますが、今回はすべてデフォルトで問題ありません。一応その他のタブの設定項目などを確認してOKボタンをクリックします。

モデルツリーに今定義した"Job-1"が追加されたことが確認できると思います。

ワーキングディレクトリの設定

解析結果のファイルやログファイルなどはワーキングディレクトリに作成されます。予め設定しておかないと、どこにファイルが保存されたのか解らなくなってしまうこともありますので一応設定しておきましょう。

ファイルメニューからワーキングディレクトリの設定を選択します。

"ワーキングディレクトリの設定"ダイアログにおいて新規ワーキングディレクトリに、ワーキングディレクトリに設定したい場所までのパスを入力します。ここで恐らく"選択"ボタンによってディレクトリを設定できるはずなのですがうまく設定することができません(バグ?)。したがって直接キー入力するか、エクスプローラーのアドレス欄からコピーして貼りつけるなどして入力してください。入力しましたらOKボタンをクリックして終了します。

上記は例です。ご自分の環境に合わせて入力してください。

解析ジョブの投入

モデルツリーにおいて、先ほど定義したJob-1の項の右クリックメニューから"ジョブの投入"を選択します(ジョブの名前を変更している方は適宜読み替えてください)。この操作で計算が実行されます。計算が実行中はジョブ名(Job-1)の横に"実行中"と表示され、計算が終了すると"完了"に変わります。

計算実行中(終了してからでも可)にジョブ名(Job-1)の項の右クリックメニューからモニタを選択しますと、実行中の経過を参照することができます。

下図がジョブモニタです。線形解析ではあまりメリットがないかもしれませんが、動解析中などではどの時刻まで計算が終了したかなどを参照することができます。エラーや警告なども参照できます。計算が終了すると"完了"と表示されます。

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解析結果の表示

結果ファイルの読み込み

モデルツリーにおいて、"モデル"タブから"結果"タブに切り替えます。

出力データベースの項の右クリックメニューから開くを選択します。その後、通常のwindowsの操作と同じようにファイルを選択するダイアログが現れますので、結果ファイル(*.odb)を選択して開きます。

結果表示モジュールに切り替わり、ビューポートには解析モデルが読み込まれて表示されます。ちなみに開いている"モデル"タブの方で開いている解析モデルとは無関係に結果表示操作は行うことができます。

変形図上のコンター図

まずは下図に示す"コンターを変形図にプロット"アイコンをクリックしてみましょう。デフォルトの設定で変形図、コンター図を表示してくれます。

デフォルトでは以下のようなミーゼス応力を表示する設定となっています。このようにアイコンをクリックするだけで簡単に結果を表示することが可能です。

断面点の定義

ここでシェル要素を用いた解析での注意点というか、ソリッド要素を用いた解析とは異なる点について説明します。それは断面点の定義についてです。シェル要素は見た目上、厚みのないものになっていますが、当然ながら内部的には厚み情報を持っていてひずみや応力も厚み方向で計算されています。したがってどの位置の計算値を表示するかを指定する必要があります。それが断面点の定義です。

断面点の定義はメニューから結果/フィールド出力を選択します。

フィールド出力ダイアログにおいて、何を表示するかを設定します。ここではミーゼス応力を表示する設定となっています。断面点を定義するには、左下にある断面点ボタンをクリックします。

断面点ダイアログにおいて、選択方法でカテゴリを選択します(プライは積層材料のときに使用します)。カテゴリの有効な場所に"下""上""上下""包絡線"のどれかを選択します。

適用ボタンもしくはOKボタンで設定を完了します。

ここで、下とか上とか言っているのは法線方向の割り当てで設定した裏・表を意味しています。解るとは思いますが、下=裏(法線ベクトルの負)、上=表(法線ベクトルの正)となっています。

有効な場所におけるそれぞれの項目について簡単に説明します。

  • :シェルの裏側の計算値を表示します。
  • :シェルの表側の計算値を表示します。
  • 上下:ビューポート上で見ている側の計算結果を表示します。
  • 包絡線:裏と表の計算値のうち絶対値の大きい方を表示するなど細かい設定ができます。

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