L型プレートの非線形静解析|解析事例
非線形静解析の例として、下の図のようなL型のプレートの解析をやってみます。非線形解析の特徴的な特性をここで見ていくことにしましょう。
解析モデル
解析対象と条件
- 寸法:長辺100mm、短辺50mm、幅50mm、厚さ1.2mmmのL型プレート
- 材質:鋼を想定して、弾性率E=2.1×10^5[MPa]、ポアソン比ν=0.3
- 荷重:長辺側のエッジをx方向に500Nで引張る
- 拘束;短辺側のエッジを完全固定
さて、ここで問題です。
このモデルで線形静解析で解析を実施した場合、どのような変形形態を示すでしょうか?
解析結果
@線形静解析の場合
上記問題の答えです。
このようなモデルで静解析を実施した結果、以下の図のようになりました。ちなみに変形の表示倍率は1倍です。かなり大きく変形しています。
でもなんか変ではありませんか?長辺側のプレートがまったく変形していませんね。イメージと違うと思った方も多いと思います。恐らく長辺側のプレートは上方向(yの+側)に反るような変形をするとイメージしたのではないでしょうか。
実は線形静解析では変形前の力の釣り合い状態を元に計算されるため、このような結果になります。変形前の状態において、長辺側のプレートはまっすぐ引っ張られるだけですので、まったく曲げモーメントが発生しないのです。
したがって、このような状況を解析する場合は、線形解析では正しい結果が得られません。もちろん変形が小さい場合は線形解析で十分近似できる場合もありますが、今回の場合はかなり大きな変形をしていますので、もはや線形で近似できるレベルではありません。
ではどのように解析したらよいのか?このような場合、非線形解析を適用する必要があるのです。次の項でみていきましょう。
A非線形静解析の場合 (幾何学的非線形)
まずは幾何学的非線形性のみを考慮した場合を計算をしてみます。幾何学的非線形とは今回の場合のように変形によって力の向きが変わるような状況です。言い方を変えると、変形によって力の方向が決まるような状況です。釣竿などはわかりやすい例ですね。
下図がその解析結果です。
先ほどイメージした変形形態になっていますね。これなら理解できます。
しかし、まだおかしなところがあります。応力レベルを見てください。図ではmN/mm^2(kPa)単位ですので気を付けてください。よく見ると拘束部付近で1200N/mm^2もの応力が発生しています。通常の鉄鋼材料では降伏して曲がってしまいます。
ということで、次に材料の非線形性を考慮して解析してみます。
B非線形解析の場合 (幾何学的非線形+材料非線形)
下図は幾何学的非線形と材料非線形を考慮して解析した結果です。ここでは250N/mm^2程度で降伏する条件で解析してみました。
かなりグンニャリ曲がっていますね。これも大体イメージできるのではないでしょうか。
非線形解析の注意点
今回紹介したように解析する対象の想定される変形量や応力レベルにより、どのような解析タイプを選ぶべきなのかをしっかり見極めるのはもちろんですが、それ以外に注意すべきことがあります。
非線形解析を実施する場合、NASTRANではSOL106の非線形静解析を利用するのが一般的です。しかし、SOL106を選んだだけでは先に述べた幾何学的非線形が考慮されるとは限りません。NASTRANバルクデータに、あるパラメータを設定する必要があります。
幾何学的非線形を考慮する設定
一般には幾何学的非線形性は大変形オプションを利用することで考慮することができます。大変形オプションを利用するには以下のPARAMカードを記述します。
PARAM,LGDISP,1
利用しているプリポストプロセッサーにより異なると思いますが、例えばPATRANを利用する場合、SOL106を選んだだけで大変形オプションが考慮される設定になっているようです。しかし、今回利用したFEMAPでは自分でパラメータを設定しないと考慮されませんでした。会社で利用しているソフトウェアも同様でした。会社でもNX Nastranを利用しているので、NX系はデフォルトで考慮されない設定なのかもしれません。
この辺をしっかりチェックして解析をしないと誤った結果を出してしまうことも考えられますので、十分注意しましょう。
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