要素の性質2(シェル要素)|Abaqusチュートリアル
(Abaqusバージョン:Abaqus 6.9 Student Edition)
今回はシェル要素の性質について説明します。前項のソリッド要素の時は簡単な解析によりその精度など確認しましたが、シェル要素の場合、簡単な解析では差が出づらく、性質がよく解らない結果になる場合があるのでここでは一般的な考え方のみ説明します。
適切な要素の選択方法
基本は4角形1次要素
線形解析の場合は4角形1次の完全積分要素(S4)を使用するとよいでしょう。非線形まで含めて様々な問題に適用できる汎用的な要素は4角形1次の低減積分要素(S4R)です。S4Rは計算コストを抑えつつ、精度のよい結果を得ることができます。まずはこれらの要素を基本に考えます。
その他の要素の採用基準
S4あるいはS4Rで以下のような問題が発生する場合や、計算コストをより低く抑えたい場合などは、それ以外の要素の採用を検討します。以下にその採用基準の概略を示します。
- S4Rでアワーグラスが発生する時は完全積分要素であるS4を使用する。
- S4でロッキングの影響が考えられる場合には2次要素を使用する(ただし、微小ひずみ・薄肉もしくは厚肉シェル問題に限られる)。
- ひずみが小さいことが予め解っている場合には、微小ひずみ要素を使用すると計算コストを低く抑えることができる。
- 横せん断変形が無視できる場合には薄肉シェル要素を使用すると計算コストを低く抑えることができる。
要素一覧
構造解析に用いられる要素の一覧と適用できるオプションとソルバーとの関係などを表にしたものを示します(表をクリックすると大きな図が表示されます)。
補足
三角形要素について
三角形要素は基本的に使用しない方が無難ですが、評価部位から離れた所で部分的に少数使用するのは問題ありません。特に複雑な形状に対してオートメッシュを適用する場合、どうしても3角形要素を使用せざるを得ない場合があります。
補足)薄肉シェル・厚肉シェルについて
Abaqusでは代表長さ/板厚が15を超えるものは薄肉シェル、それ以下は厚肉シェルとして扱うことができると定義しています。ここで代表長さとは、静的問題の場合の支持点間の距離や振動解析における固有モードの波長などです。予め薄肉シェルや厚肉シェルなどに限定することで余計な計算をする必要がなくなり、計算コストを抑えることができます。汎用に使えるS4,S4Rは薄肉・厚肉シェルの両方に対応しています。