過渡応答解析(直接法)|Abaqusチュートリアル
(Abaqusバージョン:Abaqus 6.9 Student Edition)
過渡応答解析に関する詳しい説明は『動解析入門』を参照してください。前回に引き続き過渡応答解析ですが、今回は直接法でやってみたいと思います。
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<目次>
- 概要
- 解析ステップの定義
- 減衰の定義
- 解析ジョブの作成と投入
- 解析結果の表示
概要
本項では前項のモード法で解析した過渡応答解析のモデルを直接法に変更して解析します。境界条件等は同じ設定を利用します。予め前項のモデルを開いて別名保存をしておいてください。
一応解析条件を書いておきます。前回と違って今回は直接法ですの固有値解析を事前に実施しません。よって固有値の抽出条件はありません。また、モード減衰は直接法で使えませんので、材料減衰としてレイリー減衰を設定します。その他の条件はモード法と同じです。
解析条件
- プレート寸法:300×50×1.2
- 材料:鉄鋼材料を想定(E=210GPa,ρ=7.85e-6kg/mm^3,ν=0.3)
- 拘束条件:片側の端部を完全固定
- 初期条件:Z方向に初速度1000mm/s
- 減衰:レイリー減衰(α=6.16、β=3.12e-5)
モデルの外観は以下です。
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解析ステップの定義
解析ステップの変更
前回、モード法で過渡応答解析の定義をしたStep-2を直接法の過渡応答に変更します。モデルツリーにおいて、ステップ/Step-2の右クリックメニューから"置換"を選択します。
上記操作で現れる"ステップの置換"ダイアログにおいて、新規プロシージャタイプ:一般、Dynamic,Implicit を選択して、続けるボタンをクリックします。
上記操作で現れる"ステップの編集"ダイアログの基本"タブにおいて、時間幅に1と入力します(デフォルト値)。
次に"インクリメント"タブに切り替えて、タイプ:固定、最大インクリメント数:10000、時間増分値:0.0005と入力します。今回、時間幅1秒、時間増分0.0005ですと、2000インクリメントになりますので、最大インクリメント数はこれより大きい値に設定します。
(参考)
過渡応答解析におけるΔtの決め方
設定が完了しましたらOKボタンをクリックしてダイアログを閉じます。
※モード法では"ステップの編集"ダイアログで減衰の設定をしましたが、直接法ではステップでの減衰設定がありません。
固有値解析ステップの削除
直接法では固有値解析が不要ですので、固有値解析のステップであるStep-1を削除します(残しておいても構いませんが・・)。モデルツリーにおいて、ステップ/Step-1の右クリックメニューから"削除"を選択します。
そうしますと、以下のようなダイアログで警告されますが、”はい”をクリックします。境界条件(拘束条件)をstep-1のみに設定している場合はステップを削除すると一緒に削除されますので注意してください。念のため境界条件(拘束条件)がちゃんと残っているか確認してください。もし消えてしまった場合にはInitialステップに再度作成してください。
フィールド出力要求の設定
フィールド出力は前回のモード法と同じ条件を使用します。
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減衰の定義
モード法では解析ステップの定義のところでモード減衰を定義しましたが、直接法では当然ながらモード減衰を定義することはできません。Abaqusの直接法過渡応答解析で減衰を定義する方法には以下があります。
直接法過渡応答解析における減衰の定義方法
- 減衰要素(ダッシュポットによる粘性減衰)
- 材料減衰(レイリー減衰)
ここでは材料減衰としてレイリー減衰を定義します。
材料減衰定義
モデルツリーにおいて、材料特性/steelの右クリックメニューより、編集をクリックします。(材料名はご自身で設定した材料名に読み替えてください)
材料の編集ダイアログにおいて、機械的メニュー/減衰をクリックします。
今回はレイリー減衰を定義します。材料特性の編集ダイアログにおいて、Alpha:6.16、Beta:3.12e-5と入力します。これは10〜500Hzの範囲で減衰比0.05になるようにαとβを決定しています。算出方法はこちらを参照してください。
OKボタンを押して入力を完了してください。
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解析ジョブの作成と投入
解析ジョブの作成
解析モデルが完成したので、解析ジョブを作成して計算を実行してみましょう。モデルツリーにおいて解析を展開してジョブの項が表示されるようにします。今回は前回実施したモード法の過渡応答解析のモデルをベースにしているので、その時のジョブが残っています。ジョブ名の右クリックメニューから"名前の変更"を選択します。
上記操作で現れる"ジョブの作成"ダイアログでジョブの名前にplate_dynamics_implicit_jobと入力し、"OK"ボタンをクリックします。変更するジョブ名は任意です。
ワーキングディレクトリの設定
解析結果のファイルやログファイルなどはワーキングディレクトリに作成されます。予め設定しておかないと、どこにファイルが保存されたのか解らなくなってしまうこともありますので、一応設定しておきましょう。
ファイルメニューからワーキングディレクトリの設定を選択します。ご自身の環境に合わせて設定ください。モデルファイルと同じディレクトリの方が解りやすいかもしれません。
解析ジョブの投入
モデルツリーにおいて、先ほど定義したジョブplate_dynamics_implicit_jobの右クリックメニューから"ジョブの投入"を選択します。この操作で計算が実行されます。計算が実行中はジョブ名の横に"実行中"と表示され、計算が終了すると"完了"に変わります。
plate_dynamics_implicit_jobの右クリックメニューから"モニタ"を選択しますと、解析の進行状況を確認することができます。ログの窓に完了と表示されれば計算終了です。
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解析結果の表示
前回と同様、プレート先端の加速度応答をグラフで表示する方法について説明します。
結果ファイルの読み込み
モデルツリーにおいて、ジョブ名(plate_ssd_direct_job)の右クリックメニューから"結果"をクリックします。
応答のグラフ作成
左側のツリーのジョブ名を展開して履歴出力内の項目からSpatial acceleration:A3(Z方向の加速度の意味) at 〜をダブルクリックします。ノード番号やNSET名などはご自身で設定した名前になっていると思います。
これにより、下図のようなグラフが表示されます。変位や速度なども同じようにツリーからそれぞれSpatial displacement、Spatial velocityを選択することで表示することができます。
ちなみに下図は前回モード法で解析した時の結果です。減衰の仕方がだいぶ異なっています。
モード法と直接法で結果が異なるのは減衰の与え方が異なるからです。直接法の過渡応答ではモード減衰も構造減衰も使えないので、今回レイリー減衰を採用しています。レイリー減衰は周波数に対して狙った減衰比を設定するのが困難ですが、ここで紹介している方法によってα、βのパラメータを決定しました。しかし、この方法は近似的な方法で、実はあまり正確ではないのです。
下図はα=6.16、β=3.12e-5の時のレイリー減衰の周波数特性です。狙いは10〜500Hzで減衰比ζ=0.05に設定しようとしています。しかし、10Hzと500Hzでは0.05になっていますが、間の周波数では小さな値になってしまっています。
これにより直接法ではモード法で実施した結果よりも減衰が小さめになって、その応答も異なってしまったと推測されます。
直接法全般に言えますが、直接法では減衰の与え方に課題があるため、線形の範疇で振動の解析をする場合にはモード法を採用した方が良いと思います。
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