TOP->CAE技術->機械工学->材料力学

10.断面一次モーメント|材料力学

部材の強度や剛性について検討する上で欠かせない考え方として、断面二次モーメントというものがあります。これについては次項で説明しますが、ここでは断面一次モーメントについて説明します。断面一次モーメントは断面二次モーメントを求める際の基準となる図心を算出するのに利用されます。

断面一次モーメントの定義

まず右図10-1のように、ある任意の断面形状を考えます。座標の中心はどこにあっても構いません。断面の全面積をAとし、断面内の微小な領域をdAとします。またdAの座標を(x,y)をします。


図10-1

断面一次モーメントの定義式を以下に示します。

断面一次モーメント定義式

・・・(10-01)

・・・(10-02)

ここでは断面一次モーメントにSx、Syという記号を用いました。Sの添え字x、yはそれぞれ基準とする軸を表しています。例えばSxの場合は、x軸を基準とした断面一次モーメントという意味になります。

解釈としては、断面内の微小な領域dAに、そこまで距離(Sxの場合はx軸からの距離y)を乗じたものを断面領域全体で足し合わせる(積分する)という意味です。

断面一次モーメント単独ではあまり意味がなく、主に断面の図心を求めるのに使用されます。求め方は非常に簡単で、断面一次モーメントSを断面全体の面積Aで割るだけです。具体例を示します。

具体例

アングル材の断面一次モーメント

以下のようなアングル剤の断面一次モーメントを求めてみます。青と紫の領域に分けていますが、物は一体と考えてください。計算しやすくするために2つの領域に分けています。


図10-2

まず、x軸に関する断面一次モーメントを求めます。ここでは簡単のため、図のように青と紫の2つの領域に分けて考えます。

下式(10-03)の右辺第一項が紫の領域、第二項が青の領域に関する式です。それぞれ、y方向に微小な長さdyを考え、これに幅(紫は100、青は10)を乗じてdAとしています。さらにそれにy座標を乗じて、y方向に向かって積分することで断面一次モーメントを求めます。、

・・・(10-03)

・・・(10-04)

・・・(10-05)

上記のように、x軸に関する断面一次モーメントSxは54500mm^2となりました。今回の形状の場合、x方向y方向に同じ長さ、板厚なので、y軸に関するSyも同じになります。

・・・(10-06)

アングル材の図心の計算

図心を求めるためには断面全体の面積Aが必要です。これは簡単ですので説明するまでもないですが、以下のようになります。

・・・(10-07)

図心は以下の式で計算することができます。単に断面一次モーメントを全体の断面積で除した値です。

・・・(10-08)

・・・(10-09)

ということで、図心座標が以下のように求められました。

・・・(10-10)

このように断面一次モーメントと断面積から、任意断面形状の図心の位置を求めることができます。角や丸材であれば、図心は計算せずとも簡単に求められますが、このような非対称な断面の場合、このような計算をする必要があります。

実務としては、次項で説明する断面二次モーメントもそうなのですが、CADで簡単に求めることができます。したがって、こちらを利用することが多いでしょう。しかし、どのような計算をしているのかの中身を理解していることは、断面形状を検討する上で非常に重要と考えます。これを機にしっかり理解しておきましょう。

[前へ] | [次へ]