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8.応力ひずみ線図|材料力学

応力ひずみ線図は、材料の性質を理解する上での基本となります。この項では代表的な応力ひずみ線図を例に、重要なポイントをまとめます。

応力ひずみ線図

図 8-1は軟鋼の応力ひずみ線図(公称応力、公称ひずみ線図)を模式的に表しています。応力ひずみ線図は材料の引張試験により実験的に求めます。それぞれの項目について説明します。


図8-1.軟鋼の応力ひずみ線図

弾性率

線図の一番左側はひずみに対して応力が直線的に上昇しています。この部分を弾性域と呼び、その傾きが弾性率として定義されます。

方向によりいろいろな定義がありますが、縦方向に引張った場合の弾性率は縦弾性係数と呼ばれます。詳しくは次項で説明します。

降伏点

弾性域を超えると、応力は上昇せず、ひずみだけが進行するようになります。これは材料が塑性し始めたことを示しています。このような変極点を降伏点と呼び、特に弾性域の最大の応力を上降伏点、上降伏点を過ぎて若干応力が低下し、応力一定でしばらくひずみが進行する部分の平均応力を下降伏点と呼びます。これは軟鋼でのみこのような特性を示します。

引張強さ

応力ひずみ線図で最大の応力を示すポイントをこの材料の引張強さと呼びます。通常この領域では試験片が大きく変形しており、力学的には意味のない値でありますが(変形前の断面積を元に計算される公称応力であるため)、疲労限度や硬さと強い相関があるため広く用いられます。

鋼以外の応力ひずみ線図

耐力

鋼以外の材料で、例えばアルミニウム合金や銅合金、オーステナイト系ステンレスなどは明確な降伏点が存在せず、なだらかに塑性していきます。


図8-2.鋼以外の応力ひずみ線図

このような性質を示す材料の場合は、除荷した後に残る塑性ひずみが0.2%(0.002)になる時の応力を耐力として定義しています。これは鋼でいう降伏点と同様な意味合いで利用されることが多いです。

 

真応力真ひずみ線図

これまで説明した応力ひずみ線図は公称応力と公称ひずみを元に線図を作成しています。公称応力とは、荷重を変形前の断面積で割った値です。変形が進んで断面積が変化したとしても、変形前の断面積を基準にしています。公称ひずみについても変形量を単純に変形前の長さで割った値となります。

しかし、変形が大きくなってくると断面積や長さが大きく変化してきますので、このやり方では力学的な矛盾が生じてきます。これを真の意味での応力・ひずみを計算して線図にしたものが真応力真ひずみ線図です。図8-3に軟鋼の真応力真ひずみ線図を模式的に示します。


図8-3.真応力真ひずみ線図

線形解析でひずみが小さい場合には公称応力公称ひずみと同様の値となりますが、ひずみが大きくなってくると、応力もどんどん大きくなっていき、最後には破断します。この時の応力は真破断応力と呼びます。

FEM構造解析で大きなひずみを伴う材料非線形解析をする場合、真応力真ひずみを用います。このような解析をする人以外はあまり用いることがないかもしれませんが、材料はこのような特性を示すということは認識しておく必要があります。

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