7.ひずみの定義|材料力学
垂直ひずみ
垂直ひずみの定義
まずは最も簡単な垂直方向のひずみの定義から確認してみましょう。図7-1に棒材を引っ張った時の変形状態を示します。変形前の長さをl0、変形後の長さをl、長さの変化分をΔlとします。
この時のひずみεは長さの変化分(Δl)を元の長さl0で割った値で定義されます。式に表すと以下のようになります。
・・・(7-1)
・・・(7-2)
意味は単位長さあたりの変位量ということができます。ポイントは基準が変形前の長さになっているところです。ここで定義しているひずみは公称ひずみといって、変形量が微小という条件が前提となっています。実は変形が大きくなるとひずみを正しく求められなくなり、別な理論が必要になってきます。この辺はこちらで検証していますので参考にしてください。
せん断ひずみ
次にせん断ひずみについて説明します。せん断ひずみについても、基本的には同様な考え方が適用できますが、垂直ひずみとは変形の方向が90°異なります。図7-2にせん断変形の様子を示します。
せん断ひずみの定義
図7-2の場合、y方向の長さlに対するx方向の変位Δlを用いて、式(7-3)のように定義されます。
・・・(7-3)
垂直ひずみとは変形の方向が異なりますが、同じ形式で表されます。これが最も単純なせん断ひずみの定義になりますが、次により一般的なひずみの定義を考えてみましょう。
ひずみテンソル
式(7-3)をよく見ると、tanθの定義式と同じであることが解ります。、
・・・(7-4)
さらに、θが微小(tanθ<<1)だということを考慮すれば、θで近似することができます。つまりせん断ひずみは変形の角度そのものだということができます。
・・・(7-5)
ここで、図7-2の変形後の状態を見方を変えて(ちょっと傾けて)、x方向の変形とy方向の変形が同時に起こっている状況を考えます。こうすることで2方向から力を受ける状態を表すことができ、より一般化した表記ができるようになります。
これを表したものが図7-3になります。先ほど書いたようにせん断ひずみは角度そのものですので、この場合のひずみは、y軸からの角度θ1とx軸からの角度θ2の和で式(7-6)のように表現することができます。
また、θ1、θ2は式(7-3)で求めた方法で、式(7-7)のように表すことができます。
・・・(7-6)
・・・(7-7)
これが2方向の変形に展開した場合のひずみの定義式になり、γxyと表記します。また、応力の場合と同様にγyxと同じになります。これを表したものが式(7-8)です。
・・・(7-8)
一般にひずみはこのような表記をするよりは、変位ベクトルuを用いて式(7-9)のように表記します。偏微分の形式になっていますが、表現していることは式(7-8)と同様です。微小な領域で考え、微分の考え方を導入したというだけに過ぎません。
・・・(7-9)
また、一般に式(7-10)のように定義されるひずみは工学ひずみと言います。テンソルの成分としては、式(7-11)に示すように、式(7-9)を1/2したもが使われます。
・・・(7-10)
こうすることで、垂直ひずみも含めてテンソル成分すべてを一つの式で表すことができるようになります。ひずみテンソルの成分を一般化して表記したものが下式(7-11)です。ここで、i、j = 1〜3で、x,y,zに対応します。
・・・(7-11)
最終的にひずみテンソルは式(7-12)のようになります。
・・・(7-12)