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6.ミーゼス応力|材料力学

ミーゼス応力の定義式

ミーゼス応力(あるいはフォンミーゼス応力と呼びます)はリヒャルト・フォン・ミーゼス(Richard von Mises)という人が提唱したことからこの人の名前がつけられています。 まずはミーゼス応力の定義式を記します。応力は一般に方向を持ちますが、ミーゼス応力は方向を持たずスカラー値であることが特徴です。

 ・・・(6-1)

σ1、σ2、σ3はそれぞれ最大主応力、中間主応力、最小主応力です。上式は主応力から求める式ですが、応力テンソルの成分からもミーゼス応力は求めることができます。

 ・・・(6-2)

ミーゼス応力はスカラー値

ミーゼス応力は方向を持たずスカラー値であるので、ある部位の応力を参照する場合、最大主応力や最小主応力など多方向の応力を見る必要がなく、一つの値で判断できるので便利です。ただし、圧縮か引張かどうかはミーゼス応力だけで判断できません。

ミーゼス応力の意味

ミーゼス応力の概念を簡単に言うと、多方向から複合的に荷重が加わるような応力場において、1軸の引張り又は圧縮応力へ投影した値と言えます。

ミーゼス応力を参照することで解ることは、この値が降伏点に達したらその材料は降伏するということです。通常、降伏点はテストピースを用いて単軸の引張試験により測定されますので、多方向から複合的に荷重が加わった場合の降伏の判断は難しいです。ミーゼス応力は実際の構造物内で発生しているこのような多軸の応力場において、その材料が降伏するかどうかを判断する指標となります。

ここで具体的な例によりミーゼス応力がどのような特性を示すか試してみましょう。 まず、簡単のため2次元で考えます。2次元ですので中間主応力はありません。

2次元のミーゼス応力式(主応力表記)

 ・・・(6-3)

また、説明には簡単のため図4-1に示すようなx-y座標系と主応力の方向が一致している状況を考えます。


図4-1

【CASE1】σ2=0の場合

σ1=200、σ2=0として計算してみます。

 ・・・(6-4)

単純な引張り荷重状態になりますのでミーゼス応力はσ1と等しくなります。この時、X方向へ圧縮され、Y方向へ引張られる方向に変形します。

【CASE2】σ2>0の場合(最小主応力が引張り)

σ1=200、σ2=50として計算してみます。

 ・・・(6-5)

σ2>0のときは、X方向で引張られるようにσ2の力が加わりますので、σ1によるX方向へ圧縮される歪みを軽減する方向に力が加わっていることになります。したがって全体的な歪みはσ1だけのときより小さくなるので、ミーゼス応力は最大主応力σ1より小さい値となります。

【CASE3】σ2<0の場合(最小主応力が圧縮)

σ1=200、σ2=-50として計算してみます。

 ・・・(6-6)

σ2<0のときは、X方向へ圧縮されるようにσ2の力が加わりますので、σ1によるX方向へ圧縮される歪みを助長する方向に力が加わっていることになります。したがって全体的な歪みはσ1だけのときより大きくなるので、ミーゼス応力は最大主応力σ1より大きい値となります。

ミーゼス応力がどのような値か理解できたでしょうか?今回は2次元で計算してみましたが3次元で計算しても同様です。

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