7.CAEの運用体制|CAEの効果的活用法
5項で書いたようにCAEは誰でも簡単に利用できるようなシステムではないと考えています。ではそのようなCAEをどう運用すべきなのでしょうか。
設計検討時に用いるCAEは設計者が実施すべき
やはり設計者がCAEを活用しながら設計を進めることは非常に重要だと考えます。前項でも述べたように、すでに標準化された簡単なモデルであれば、設計者でも十分にCAEを活用することができます。設計者は設計することが仕事ですので、CAEはツールとして活用できればよいのです。精度的には80点(あるいはそれ以下)かもしれませんが、標準化された方法に従って解析を行い設計の良否を判断します。大切なことは、"解析的な厄介なこと"は標準化することである意味ブラックボックス的に扱い、設計者には設計することに専念できるような環境にすることです。
設計者自らがCAEを活用することのメリットとして、"現象のメカニズムを的確に理解できる"、"それに対してどのような設計をすべきなのかが見えてくる"ということが挙げられます。この時適用するCAEにはあまり精度は要求しません。とりあえず各設計案の相対比較により、AかBではどちらがよいのかが判断できればよいのです。このような手法の最たるはFOA(First Order Analysys)などとも呼ばれますが、設計の上流で活用するには1ケタの精度でも構わないのです。この段階でしっかり検討を実施することでので、筋の良い設計をすることが可能になると考えます。
従来、詳細設計が終了した段階でようやくCAEを実施してその性能を確認するというようなやり方もありましたが、この段階になってからCAEにより問題が発覚しても、すでにいろいろと仕様が決まってきてしまっているので大きな設計変更が困難な場合も多いです。したがって、できるだけ早い段階で、いわゆる概念設計からCAEを活用することが重要になってきます。そのためには設計者自らがCAEを実施するのが一番です。
実機試験の代替としてのCAE
詳細設計が完了した段階においては、詳細な解析モデル(大規模なモデル)を用いて実機試験を代替するようなCAEを実施します。これは出図前の最終チェックになります。前述の設計者が活用するCAEでは設計の方向性は定められても、最終的に試験をパスする性能が得られているかどうかまでは確認することができないことが多いです。したがって最終的には詳細な解析モデルを用いたCAEが必要になってきます。
実機試験の代替としてのCAEは、解析モデルも複雑、大規模になりがちですので、モデルを構築するための工数も多くかかります。また、モデル化に際しては高度な技術・ノウハウも要します。したがって、こういった目的の解析案件は高度な専門技術を有するCAE技術者でないと対応は難しいと考えます。