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ランダム応答解析|Abaqusチュートリアル

(Abaqusバージョン:Abaqus 6.12 Student Edition)

ランダム応答解析に関する詳しい説明は『動解析入門』を参照してください。ここではAbaqusによるモデル化方法に関して説明します。

プレートのランダム応答解析






概要

本項では以前説明したプレートの固有値解析モデルに基礎加振として加速度のPSDを設定し、ランダム応答解析を実施する手順について説明します。本項でのモデリングを始める前に、予めプレートの固有値解析のモデルを開いて別名保存をしておいてください。

注意:Abaqus/CAEでランダム応答解析の設定するには6.12以降のバージョンが必要です。こちらの説明に従って最新版を入手してください。

解析条件

  • プレート寸法:300×50×1.2
  • 材料:鉄鋼材料を想定(E=210GPa,ρ=7.85e-6kg/mm^3,ν=0.3)
  • 拘束条件:片側の端部を完全固定
  • 荷重条件:Z方向に加速度PSDによる基礎加振(50〜200Hzで加速度の標準偏差5G)
  • 固有値抽出範囲:1〜500Hz
  • 減衰:1〜500Hzの範囲で減衰比0.05

モデルの外観は以下です。

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解析ステップの定義

解析ステップの作成方法

モデルツリーにおいて、ステップ右クリックメニューから"作成"を選択します。この時、ステップモジュールに自動で切り替わります。

上記操作で現れる"ステップの作成"ダイアログにおいて、このステップの後に新しいステップを追加で、Step-1(固有値解析のステップ)を選択名前にStep-2(デフォルト)、プロシージャタイプ:線形摂動Random response を選択して、続けるボタンをクリックします。

(ランダム応答解析はモード法しか対応していません)

上記操作で現れる"ステップの編集"ダイアログの基本タブにおいて、スケール:線形、振動数の下限値:50、振動数の上限値:200Hz、応答計算点の数:20、バイアス:3と入力します。

応答計算点は固有振動数で分割されますので、あまり気にする必要はありません。応答波形がきれいに描画できるくらいには応答点数を設定してください。

Δfの考え方は以下のリンクを参考にしてください。ランダム応答解析でも周波数応答解析と同じです。

(参考)
周波数応答解析におけるΔfを見積もる方法
モード法の周波数応答、過渡応答解析におけるモード数

次に減衰タブにおいて、次の範囲で減衰を指定:振動数、直接減衰データを使用するにチェック、振動数と臨界減衰比の関係で1〜500Hzで0.05と入力します。

周波数によってモード減衰比を変化させたいときは行を増やして適切に設定します。今回は一律で0.05としました。

設定が完了しましたらOKボタンをクリックしてダイアログを閉じます。

フィールド出力要求の設定

ランダム応答解析のフィールド出力を設定します。上記でランダム応答解析のステップを定義すると、自動で新たなフィールド出力F-Output-2が設定されます。このF-Output-2の右クリックメニューから"編集"をクリックします。

デフォルトの設定に加えて、MISES,Mises相当応力、RMISES,Mises相当応力のRMS値にチェックを入れます。

RTU,全変位と回転、RTV,全速度、RTA,全加速度、それぞれの平方自乗平均にチェックを入れます。

(注意)これらはグランドを基準とした値として出力されます。拘束点を基準とした相対的な値を出力したい場合は、RU,RV,RAを選択してください。

最後にOKボタンをクリックします。

同様に固有値解析のステップ(Step-1)において、応力を出力するように設定します。応力の出力がないとランダム応答解析のステップで応力を計算することができません。ここではS,応力の成分と不変量、MISES,Mises相当応力にチェックします。

<補足>

今回のモデルは要素数が少ないのであまり問題になりませんが、大規模モデルになると、すべての節点、要素の解析結果を出力すると膨大なファイルサイズなることも考えられます。その場合、領域をモデル全体ではなく、集合などで評価したい部位を指定し、履歴出力要求するとよいでしょう。

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基礎加振の設定

PSD曲線の定義

加速度のPSDをモデルに全体に基礎加振として定義します。

PSDは時間変化曲線の作成ツールで定義します。モデルツリーにおいて、時間変化の項目の右クリックメニューから"作成"を選択します。この時、荷重モジュールに自動で切り替わります。

上記操作で現れる"時間変化曲線の作成"ダイアログにおいて、タイプでPSD定義を選択し、続けるのボタンをクリックします。名前を適宜変更しても構いません。

上記操作で現れる"時間変化曲線の編集"ダイアログにおいて、仕様単位:重力(基礎加振)参照重力:9810PSD値は下図のように入力します。これは標準偏差(実効値)で5Gとなるようにしています。参照重力を設定しているので表に入力するデータの単位はG^2/mm^2となります。

加速度基礎加振の定義

上記で設定したPSDを基礎加振として設定します。モデルツリーにおいて、境界条件の項目の右クリックメニューから”作成”を選択します。

境界条件の作成ダイアログにおいて、ステップ:Step-2(ランダム応答解析のステップ)を選択、選択されたステップに対するタイプ:加速度基礎加振を選択し、"続ける"ボタンをクリックします。

境界条件の編集ダイアログの基本タブにおいて、加振方向を設定します。ここではz方向(U3)に加振しますのでU3を選択します。

相関タブに切り替えアプローチ:相関、PSD:Amp-1、実部:1、虚部:0を入力します。最後にOKボタンをクリックします。

 

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解析ジョブの作成と投入

解析ジョブの作成

解析モデルが完成したので、解析ジョブを作成して計算を実行してみましょう。モデルツリーにおいて解析を展開してジョブの項が表示されるようにします。今回は前回実施した固有値解析のモデルをベースにしているので、その時のジョブが残っています。ジョブ名の右クリックメニューから"名前の変更"を選択します。

上記操作で現れる"ジョブの作成"ダイアログでジョブの名前にplate_random_modal_jobと入力し、"OK"ボタンをクリックします。変更するジョブ名は任意です。

ワーキングディレクトリの設定

解析結果のファイルやログファイルなどはワーキングディレクトリに作成されます。予め設定しておかないと、どこにファイルが保存されたのか解らなくなってしまうこともありますので、一応設定しておきましょう。

ファイルメニューからワーキングディレクトリの設定を選択します。ご自身の環境に合わせて設定ください。モデルファイルと同じディレクトリの方が解りやすいかもしれません。

解析ジョブの投入

モデルツリーにおいて、先ほど定義したジョブplate_random_jobの右クリックメニューから"ジョブの投入"を選択します。ここで履歴出力が要求されていませんというメッセージが出ますが継続して構いません。計算が実行中はジョブ名の横に"実行中"と表示され、計算が終了すると"完了"に変わります。

plate_random_jobの右クリックメニューから"モニタ"を選択しますと、解析の進行状況を確認することができます。ログの窓に完了と表示されれば計算終了です。

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解析結果の表示

結果ファイルの読み込み

モデルツリーにおいて、ジョブ名(plate_ssd_modal_job)の右クリックメニューから"結果"をクリックします。

応力の応答PSDグラフの作成

初めに、結果/オプションで表れる結果オプションダイアログにおいて、平均化の限界値を100%に設定しておきます。なぜか平均化がうまくいかないようで、応答グラフがギザギザになってしまうのをこの設定で回避することができます。

今回は応力の応答PSDをグラフで表示する方法について説明します。メニューからツール/XYデータ/マネージャを選択します。

XYデータマネージャにおいて、作成ボタンをクリックします。

XYデータの作成ダイアログにおいて、ODBフィールド出力をクリックします。

ODBフィールド出力からのXYデータダイアログにおいて、位置:節点、編集フィールドでMISESを選択します。

断面点は選択にチェックし、設定ボタンをクリックします。ここでは表面を選択してみます。フェールドレポート断面点の設定ダイアログにおいて、カテゴリでshellを選択し、設定可能な断面点でSPOSを選択します。SNEGが裏面、SPOSが表面となります。OKボタンをクリックします。

 

ODBフィールド出力からのXYデータダイアログで”有効なステップ/フレーム”のボタンをクリックします。

有効なステップ/フレームダイアログにおいて、ランダム応答解析のステップのみが選択されるように、Step-1のチェックを外します。緑のチェックがStep-2のみに付くようにしたら、OKボタンをクリックします。

ODBフィールド出力からのXYデータダイアログにおいて、要素/節点タブをクリックしてタブを切り替えます。"選択の編集"ボタンをクリックして、ビューポート上で評価したい節点をクリックします。

ここでは下図のようにプレートのプレートの拘束エッジから2番目の節点を選択しました。赤い点が選択した節点です。選択できましたらプロンプトエリアの"完了"ボタンをクリックします。

ODBフィールド出力からのXYデータダイアログにおいて、"プロット"ボタンをクリックします。

そうしますと、ビューポートに下図のような応力のPSDが表示されます。

応力速度の標準偏差

応力速度は等価振動数を算出するために必要となります。しかし応力速度はAbaqus/CAEで見ることはできないようなので、自前で計算することにします。

先ほどの応力のPSDのデータを抽出します。XYデータマネージャダイアログにおいて、編集ボタンをクリックします。

XYデータの編集ダイアログにおいて、応力のPSDデータをすべて選択してコピーします。

計算方法の説明はちょっと面倒なのでサンプルファイルを用意しましたので必要な方はダウンロードしてご活用ください。

応力の標準偏差(実効値)

とりあえずをクリックしてコンター表示に切り替えます。

結果メニューからフィールド出力を選択します。

出力変数としてRMISESを選択してOKボタンをクリックします。必要に応じて断面点で表示させる面を選択してください。

下図のように応力の標準偏差分布が描画されます。

疲労寿命推定

今回のモデルで応力のPSDを評価した点の標準偏差は14.4MPa、等価振動数は80.1Hzとなりました。これを使って疲労寿命を求めてみます。

まずは材料のSN曲線を入手します。今回は下記のようなSN曲線を用意しました(仮想材料として私が適当に作ったものです)。今回は3σまで考えても疲労限度以下ですので強度的に全く問題ないと思われますが、疲労寿命推定の手順を確認するために計算してみます。

グラフに書き忘れましたが、縦軸は応力[MPa]、横軸は繰り返し回数[回]となります。

疲労限度以下は修正マイナー則で延長して考えることにします。この場合、1σでのN数は3.5×10^8、2σでのN数は2.5×10^8、3σでのN数は1.5×10^8です。

寿命の計算式は動解析入門で紹介した下式を用います。

結果、疲労寿命は375万秒、時間で言うと1040時間、日数で43日でした。

繰り返しますが今回は疲労限度以下ですので実際の解釈は異なることに注意してください。あくまで寿命予測手順の確認用です。

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