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ホイスト式天井クレーン|Abaqusチュートリアル

(Abaqusバージョン:Abaqus 6.9 Student Edition)

付属のマニュアルの例題、ホイスト式天井クレーンの解析方法について説明します。2次元平面でトラス要素を用いた解析事例です。

事前に、Abaqus/CAEを起動してください。セッションの開始というダイアログが出る場合には閉じておいてください。

ホイスト式天井クレーン

概要

まず今回解析するモデルの概要について説明します。対象はホイスト式天井クレーンのフレーム(のようなもの)で下図のような丸棒部材を三角に組み合わせた構造となっています。中心にホイスト(巻上げ機)が取り付いて荷を持つ状況を想定します。今回は静的に10000Nを載荷します。フレームの材質は鉄鋼材料を想定しています。

(参考)

このように三角形を基本単位として組み合わされる構造はトラス構造と呼ばれ、土木、建築分野では多く用いられる構造です。各部材の接合はピン接合で曲げモーメントを受けないようになっていて、基本的に部材の軸力のみで構造強度を保っています。実際の構造では必ずしもピン結合ではありませんが、一般に構成部材は曲げに弱い細長い形状をしているので、ピン結合で近似しても問題ないと考えられます。

その他、土木、建築分野でよく見られる構造としてラーメン構造があります。これは部材間の結合が剛で矩形に組まれた構造です。ラーメン構造では部材間の結合が剛であるため、軸力の他に曲げモーメントも受け持ちます。

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パートの作成

パートの作成

モデルツリーパート上で右クリックして現れるメニューにおいて作成をピックします。ちなみにパートダブルクリックすることでも同じ操作をすることができます。

以下のパートの作成ダイアログにより、どのような形状作成するのかを定義します。ここでは2D平面モデルを作成しますので、モデリング空間:2次元平面、タイプ:変形体、ベースフィーチャ:ワイヤ、近似サイズ:4000を入力します。名前は適宜変更しても構いません。

設定が終わりましたら、続けるのボタンをクリックします。そうしますとビューポートはグリッドが表示されたスケッチ画面に切り替わります。

断面のスケッチ

後で寸法を入れるとして、まずはフレームの大まかに形状を作成します。ツールボックスエリアにスケッチで使用するアイコンが多数用意されていますが、ここでは@に示す"直線の作成、矩形(4ライン)"をクリックします。これは対角に2点をクリックすることで矩形を簡単に作成することができるツールです。次にA、Bの順にビューポート上をクリックしてください。

拘束の削除

矩形をスケッチすると自動的に4つの角に垂直拘束、下辺に水平拘束が追加されます。ここで垂直拘束を削除して台形状の形になれるようにします。@の削除ツールをクリックAの範囲で拘束を選択B4つの角に設定された垂直拘束をshiftを押しながらクリックして選択、最後にC完了をクリックします。下図参照。

拘束の追加

矩形の上下の辺が常に平行になるような拘束を追加します。初めに@の拘束の追加ツールをクリックします。すると拘束の種類を設定するダイアログが現れますので、A"並行"を選択し、矩形の上下の辺をshiftキーを押しながら選択します。最後にC完了をクリックします。

寸法の追加

寸法を追加してフレームの外形形状を作っていきます。@寸法の追加をクリックします。A寸法を追加したい辺をクリックします。寸法線がマウスポインタに引き出されますので、B寸法を配置したい位置でクリックします。最後にCプロンプトエリアに寸法値を入力してEnterキーを押します。必要に応じてビューを調整してください。

フレーム内側の梁のスケッチ

フレームの内側の梁をスケッチします。@直線の作成:結合をクリックし、下図のようにフレームの外形線との交点をABCと順にクリックしていきます。最後に直線の作成ツールの終了DESCキーを押します。

エッジの分割

フレーム下側のエッジを分割します。@自動トリムツールを長押しすると、サブメニューが現れますので、A分割ツールをクリックします。B分割したい下側のエッジをクリックして選択し、C分割位置を決めるための参照エッジをクリックします。ESCキーで分割ツールを終了することができます。

拘束の追加

分割したフレーム下側のエッジの長さを揃えます。@拘束の追加ツールをクリックA同長を選択B長さを揃えたい2つのエッジをShiftキーを押しながら選択します。最後にC完了をクリックします。

最終的な形状は以下のようになります。最後に完了をクリックしてスケッチャーを終了します。

ファイルの保存

ここで一旦ファイルを保存しておきましょう。操作方法は、ファイル/保存 または ファイル/別名保存 他の一般的なソフトウェアと同じですね。定期的に保存しておくようにしましょう。

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材料定義

ここでは弾性率210GPa、ポアソン比0.3の鉄鋼材料を想定します。モデルツリーにおいて材料特性の項目の右クリックメニューから"作成"を選択(材料特性の項目をダブルクリックでも可)。

上記操作によって現れる"材料特性の編集"ダイアログにおいて、名前に"steel"と入力します。これは例であり、名前は何でも構いません。複数の材料を使用するときにちゃんと識別できればよいです。JISの材料名を入れてもよいかもしれません。さらに"材料特性の編集"ダイアログにおいて、メニューの機械的/弾性/弾性を選択します。

そうすると、材料挙動のリストに"弾性"の項目が追加されて、下側に"弾性"についての定義ができるようになります。ここで構造解析で使用するYoung率(弾性率)とPoisson比(ポアソン比)を入力します(参考:材料力学講座/弾性率)。単位系は整合性が取れていれば何でも良いですが、ここでは力としてmNを用いる単位系を使います。(参考:整合性の取れた単位系)

入力が終わりましたら、OKボタンをクリックします。モデルツリーの材料特性の項目を展開すると、今定義した"steel"が追加されていることが確認できます。

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要素特性の定義と割り当て

今回の解析ではトラス要素を使用します。トラス要素特性の定義には, 材料の参照と断面積のみが必要です。トラス要素を適用するフレーム部材は, 直径が10mm の円形断面のバーであると想定します。

要素特性の定義

モデルツリーにおいて、要素特性の項目の右クリックメニューから"作成"を選択(要素特性の項目をダブルクリックでも可)。この時、自動で特性モジュールに切り替わります。

"要素特性の作成"ダイアログにおいて、名前に"FrameSection"と入力、カテゴリで"はり"タイプで"トラス"を選択して、"続ける"ボタンをクリックします。

"要素特性の編集"ダイアログにおいて、材料特性で先ほど定義したsteelを選択断面積に78.5398163397448を入力(直径10mmの円形断面の面積)、最後にOKボタンをクリックします。

ちなみにコマンドラインインターフェースを電卓として利用することができます。コマンドラインインターフェースは画面一番下で通常メッセージが表示されるところです。左下の黄色のボタンをクリックすることで切り替えることができます。ここで計算した値をコピペすると便利です。

要素特性の割り当て

上記で定義した要素の特性をスケッチしたフレームに対して割り当てます。モデルツリーにおいて、パート、Part-1をそれぞれ展開します。Part-1の下位にある要素特性割り当てという項目の右クリックメニューから"作成"を選択します。

プロンプトエリアに"要素特性を割り当てる領域を選択してください"と出ますので、この状態で@ビューポート上のフレームモデルをマウスを使って選択します。この時マウスをドラッグすることで一度に選択することができます。正しく選択されましたらAプロンプトエリアの完了ボタンをクリックします。

要素特性割り当ての編集ダイアログにおいて、要素特性に先ほど作成したFrameSectionが選択されていることを確認してOKボタンをクリックします。これによりフレームに材料特性、断面積をセットした要素特性が割り当てられました。

要素特性が割り当てられますと、下図のようにフレームモデルがアクア色に変化します。

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モデルのアセンブリ

まずはアセンブリにおいてパートのインスタンスを作成します。モデルツリーでアセンブリを展開してインスタンスの項目上の右クリックメニューから"作成"を選択します。この時、自動でアセンブリモジュールに切り替わります。

"インスタンスの作成"ダイアログにおいて、インスタンスタイプをディペンデントに設定してOKボタンをクリックします。

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解析ステップの定義

解析ステップの作成方法

モデルツリーにおいて、ステップの項目の右クリックメニューから"作成"を選択します。この時、ステップモジュールに自動で切り替わります。

上記操作で現れる"ステップの作成"ダイアログにおいて、プロシージャタイプ:線形摂動Static,Linear perturbationを選択して、続けるボタンをクリック。名前を適宜変更しても構いません。

上記操作で現れる"ステップの編集"ダイアログはデフォルトをそのまま受け入れてOKボタンをクリックします。

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荷重条件の定義

モデルツリーにおいて、荷重の項目の右クリックメニューから"作成"を選択します。この時、荷重モジュールに自動で切り替わります。

上記操作で現れる"荷重の作成"ダイアログにおいて、ステップで先ほど作成したステップ名(Step-1)、カテゴリで機械的、タイプで集中力を選択し、続けるのボタンをクリックします。名前を適宜変更しても構いません。

次にビューポート上で荷重を設定するポイントを選択します。@に示す点をクリックして選択し、A完了ボタンをクリック

上記操作で現れる"荷重の編集"ダイアログにおいて、CF2に-10000000と入力(10000N)します。

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境界条件の定義

ここではフレームの拘束条件を設定します。

境界条件の定義

モデルツリーにおいて、境界条件の項の右クリックメニューから"作成"を選択します。

上記操作で現れる"境界条件の作成"ダイアログにおいて、ステップ:Initialカテゴリ:機械的タイプ:変位/回転、を選択し、"続ける"ボタンをクリック。名前を適宜変更しても構いません。

ここで境界条件を設定する部位を選択するのですが、まずはフレーム左下コーナーのポイントに設定していきます。ビューポート上で@フレーム左下の点を選択Aプロンプトエリアの"完了"ボタンをクリックします。

上記操作で現れる境界条件の編集ダイアログにおいて、U1、U2にチェックを入れます。したがってこの設定で並進自由度をすべて拘束したことになります。回転は自由ですのでこの点で回転を許容しています。OKボタンをクリックして設定を終了します。

<補足>
Uは並進変位を表し、URは回転変位を表します。後に続く数値は方向を表し、1,2,3はそれぞれx,y,zを表します

同様の操作で今度はフレーム右下の点について境界条件を設定します。編集ダイアログにおいて、U2にチェックを入れます。これにより上下方向のみ拘束されたことになります。最後にOKボタンをクリックして設定を終了します。

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モデルのメッシュ分割

メッシュモジュールへの切り替え

まずはモデルツリーにおいて、パート/Pert-1まで展開し、メッシュという項目が表示されるようにします。次にメッシュ(空)の項目の右クリックメニューからコンテキストの切り替えを選択します。コンテキストの切り替えとはモジュールを切り替えることと同義だと思います。

要素タイプの割り当て

さて、この辺から計算力学に関する知識がないと訳が解らなくなりがちなのですが、とりあえず説明していきます。要素に関する詳細は別途説明します。

下図に示す要素タイプの割り当てアイコンをクリックします。

上記操作で現れる"要素タイプ"ダイアログにおいて、要素ライブラリ:Standardジオメトリ次数:線形ファミリ:トラスを選択します。最後にOKボタンをクリックします。

トラス要素は軸方向の圧縮と引張り方向の荷重のみ受け持ち、曲げが作用しない要素です。

シードの定義

シードとはメッシュをどのようなサイズで分割するかということを決める設定です。モデル上に予めメッシュの基準点となる種(シード)をばらまきます。

下図に示すパートのシードアイコンをクリックします。

上記操作で現れる"全体シード"ダイアログにおいて、近似全体サイズを1000と入力します。フレームの各エッジの長さが1000mmですので、各エッジに1要素となる設定です。

適用ボタンをクリックすると、下図のようにエッジ上に点が表示され、どのくらいのサイズなのかをモデル上で確認することができます。よければキャンセルボタンをクリックします。OKボタンは設定を適用させた上でダイアログを閉じます。適宜使い分けてください。

メッシュの作成

やっとメッシュを作成する準備が整いました。下図に示すパートのメッシュアイコンをクリックします。

プロンプトエリアに"パートをメッシュ分割しますか?"と聞いてきますので、"はい"をクリックします。

メッシュ分割が完了すると下図のようにモデルで確認することができます。要素が線なのでちょっと解りづらいですが・・。

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解析ジョブの作成と投入

解析ジョブの作成

解析モデルが完成したので、解析ジョブを作成して計算を実行してみましょう。モデルツリーにおいて解析を展開してジョブの項が表示されるようにします。ジョブの項の右クリックメニューから"作成"を選択します。この時、ジョブモジュールに自動で切り替わります。

上記操作で現れる"ジョブの作成"ダイアログでジョブの名前を入力(デフォルトはJob-1)、モデルを選択(Model-1)します。デフォルトを受け入れる場合はそのまま、続けるボタンをクリックします。

続く"ジョブの編集"ダイアログでは色々設定はありますが、今回はすべてデフォルトで問題ありません。一応その他のタブの設定項目などを確認してOKボタンをクリックします。

モデルツリーに今定義した"Job-1"が追加されたことが確認できると思います。

ワーキングディレクトリの設定

解析結果のファイルやログファイルなどはワーキングディレクトリに作成されます。予め設定しておかないと、どこにファイルが保存されたのか解らなくなってしまうこともありますので一応設定しておきましょう。

ファイルメニューからワーキングディレクトリの設定を選択します。

"ワーキングディレクトリの設定"ダイアログにおいて新規ワーキングディレクトリに、ワーキングディレクトリに設定したい場所までのパスを入力します。ここで恐らく"選択"ボタンによってディレクトリを設定できるはずなのですがうまく設定することができません(バグ?)。したがって直接キー入力するか、エクスプローラーのアドレス欄からコピーして貼りつけるなどして入力してください。入力しましたらOKボタンをクリックして終了します。

上記は例です。ご自分の環境に合わせて入力してください。

解析ジョブの投入

モデルツリーにおいて、先ほど定義したJob-1の項の右クリックメニューから"ジョブの投入"を選択します(ジョブの名前を変更している方は適宜読み替えてください)。この操作で計算が実行されます。計算が実行中はジョブ名(Job-1)の横に"実行中"と表示され、計算が終了すると"完了"に変わります。

計算実行中(終了してからでも可)にジョブ名(Job-1)の項の右クリックメニューからモニタを選択しますと、実行中の経過を参照することができます。

下図がジョブモニタです。線形解析ではあまりメリットがないかもしれませんが、動解析中などではどの時刻まで計算が終了したかなどを参照することができます。エラーや警告なども参照できます。計算が終了すると"完了"と表示されます。

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解析結果の表示

結果ファイルの読み込み

モデルツリーにおいて、"モデル"タブから"結果"タブに切り替えます。

出力データベースの項の右クリックメニューから開くを選択します。その後、通常のwindowsの操作と同じようにファイルを選択するダイアログが現れますので、結果ファイル(*.odb)を選択して開きます。

結果表示モジュールに切り替わり、ビューポートには解析モデルが読み込まれて表示されます。ちなみに開いている"モデル"タブの方で開いている解析モデルとは無関係に結果表示操作は行うことができます。

変形図上のコンター図

まずは下図に示す"コンターを変形図にプロット"アイコンをクリックしてみましょう。デフォルトの設定で変形図、コンター図を表示してくれます。

デフォルトでは以下のようなミーゼス応力を表示する設定となっています。このようにアイコンをクリックするだけで簡単に結果を表示することが可能です。

その他、結果表示方法の詳細解説についてはこちらを参考にしてください。

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