8.解析結果の評価|FEM構造解析基礎
まずは解析結果のチェック
FEMで解析を実施したら、その解析結果から工学的・設計的な判断をする前に、この結果が妥当なものかどうかをしっかりチェックすることが重要です。FEM構造解析を含むCAE解析ではその入力データが膨大かつ複雑になることが多いので、単純なミスが混入しやすいという問題があります。計算実行前に設定項目を一つ一つチェックするのはもちろんですが、解析結果からも再チェックする必要があります。(ここではソフトウェアそのものの信頼性はあるものとします)
何をどのようにチェックするかというと、変形形態やその変形量および母材応力値が、予測したものと合っているかどうかです。拘束条件を間違えた場合、明らかに変な方向に変形したりするのでチェックできます。また変位や応力のオーダーから荷重条件が間違っていないか等をチェックします。これにより初歩的なミスは防げると思います。
評価方法
評価方法は解析の目的によります。モデル化検討の項でも少し触れましたが、解析する前にどのように評価すべきかを明確にして、それに応じたモデル化をします。
FEM構造解析における代表的な評価方法は以下です。
FEM構造解析における代表的な評価方法
- 剛性の指標として変位を評価
- 強度の指標として応力を評価
これらの計算値は、できればその値そのもので絶対的に評価したいのですが、これは非常に難しい問題です。例えば剛性に関して評価する場合、変位を何mm以下に抑えれば十分な剛性といえるのか?、強度に関しては応力をどの程度に抑えれば目標の疲労強度を満足するのか?、等です。設計目標がはっきりしていて、その判断方法が決まっていれば比較的簡単ですが、剛性評価のように人間の主観に頼っているような性能の場合、しっかり基準が決まっていない場合も多いと思います。あるいは荷重条件や拘束条件等の境界条件がはっきり解っておらず、絶対的な値の予測が困難な場合もあります。
そのような場合、実績のある現行機種との比較でどうなのか、あるいは他社の製品と比較してどうなのか、のように比較できる対象の解析モデルも同時に作成して比較評価する手法があります。これは非常に有効なやり方ですが、解析モデルを2つ以上作る必要がるので手間がかかります。できれば絶対評価できるように、多くの実験とその検証を繰り返し、精度の高い解析が実施できるよう努力すべきです。これによりモデリングや評価に関するノウハウが社内に蓄積し、いずれ絶対評価が可能になることでしょう。その最たるが試作レス開発ですね。すべてコンピュータで性能を評価してしまう・・・いずれこういった時代が来るのでしょうか。残念ながら私のところではまだまだです。
さて、ここで注意すべきことがあります。それは主に応力集中部位で発生するFEM特有の問題についてです。 これをしっかり理解しておかないと判断を間違えてしまう場合があります。
応力集中部位で起こるFEM特有の問題点
- メッシュのサイズにより応力値が変わる。
- メッシュを細かくしていくと応力集中が際限なく大きくなる。
応力集中が発生する個所は応力の勾配が急激にきつくなります。メッシュが粗い場合、その急激な変化を計算上表現することができず、応力が集中すべき所に集中が発生しないという現象が起こります。
逆にメッシュをどんどん細かくしていくとどうなるか?今度は際限なく大きな応力が計算されることになります。これを対策しようとして強度アップをどんどん図っていくと強度的に過剰な品質の製品ができてしまうことになります。
このように、FEMでは応力が集中する個所の計算精度は良くないということをまず理解しましょう。しかしこれではまともに評価できないではないか、と思うかもしれませんが、それを踏まえた評価方法があります。これについては次項で説明します。