TOP->CAE技術->実測値による検証方法

8.実測値から逆算する荷重同定の方法|実測値による検証方法

本項では実測値との相関の高い解析モデルを作成するための方法について説明します。いわゆる”合せ込み”でコリレーションと呼ばれます。一般にコリレーションと言うと、実験モーダル解析値とFEM固有値解析による結果(周波数やモード)が一致するように合せ込みを行うことを指す場合が多いですが、本項ではそういった動的な特性ではなく、静的な荷重による応力分布を実測値に合せ込む方法について説明します。

荷重値の合せ込み

実測値とFEM解析値を前項のような方法で比較して、あまり強い相関が得られなかった場合、解析モデルの方を修正する必要があります。修正する手段としてはいろいろ考えられますが、今回は主に不確定な部分として残ることが多い荷重値をターゲットにします。

単純で決まった動きしかしない機械装置であれば、その荷重を予測することは比較的簡単ですが、複雑な動きをする場合には実験により同定する手法が用いられます。

不確定な荷重値を実験により同定する方法としては、以下のような方法があります。

荷重同定手法

  1. 荷重そのものをロードセルなどで計測する方法、
  2. 運動状態を加速度あるいは変位計などで計測して推定する方法、
  3. 構造部材に発生している応力値から逆算する方法

本項では、最も手軽な応力値から逆算する方法について説明します。

応力から荷重を逆算するためには、5項で説明したような方法で荷重を設定していると効率的に荷重同定作業を行うことができます。それは、荷重の方向・大きさを変えるだけなら計算をやり直す必要がないからです。ポストプロセッサ上で荷重の組み合わせ係数を変更するだけで、新たな荷重条件における解析結果を自由に作り出すことができます。しかし、ポストプロセッサ上で応力データを一つ一つ参照する手間は変わりません。たくさんの荷重パターンを試す場合には現実的な方法とは言えません。

エクセルによる応力評価・荷重同定

そこで、各荷重セットにおける評価点の応力テンソルを出力して、エクセル上で評価する方法があります。応力テンソルがあれば、そこから任意の方法の応力を計算したり、ミーゼス応力を計算したり、荷重セットの組み合わせパターンを変更したりなど、ポストプロセッサを介さずにいろいろな方法で評価することが可能です。またVBAによりプログラムをすることで荷重同定などの作業を自動化することもできます。

ここではエクセル上で簡単に荷重同定を行う方法について説明します。この場合、応力テンソルではなくゲージ方向応力をポストプロセッサから出力して用いることとします。これは計算を簡単にするためです。ミーゼス応力の計算などはできなくなりますが、荷重同定に用いるだけなら問題ありません。

考え方は5項で説明しましたが、荷重の組み合わせパターンをエクセルで作り出すところがポイントです。エクセルなら係数の数値を変えるだけで、一瞬で異なる荷重の解析結果を作り出すことができるようになります。そして7項で述べた実測値と比較するグラフを作成しておけば、検証作業も一瞬で終わります。これにより、どんどん係数を手動で変更しながら相関をチェックしていけば、最も実測値と相関の強い荷重セットの組み合わせを比較的簡単に求められるようになります。

エクセルによる荷重同定のサンプル

サンプルを作成しました。こちらからダウンロードして活用ください。

図8-1

[前へ] | [CAE技術のページへ]