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1.はじめに|実測値による検証方法

概要

CAEを有効に開発現場で有効に活用するためには、現実に起こっている現象をCAEでしっかり再現できていることが重要です。そのためには実測値による検証作業が欠かせません。本講座では、特にFEM構造解析分野に焦点を絞って、実験で得られた応力値とFEMで解析した応力値を比較照合する方法について、実験および解析の両面から説明していきます。さらには、荷重が不確定な場合において実験応力値から入力荷重を逆算する方法などについて説明していきます。

前提条件

線形静解析の有効活用がFEM活用のカギ

本講座では、構造解析分野における線形静解析の活用を前提とします。理由は構造設計の検討に最も多く使われているツールだと考えるからです。一般に実際の現象は非定常、非線形ですが、これを静的・線形に置き換えることができれば、多くの分野で活用が期待できます。安易に非線形解析などを使うこともできますが、システムへの投資も必要、解析的なスキル必要、計算時間がかかる等々、設計者が通常活用するには問題もあります。

したがって、以前書いた内容にも絡みますが、80%の精度になるかもしれないが、ざっくりと線形静解析に近似してしまおうという考えです。そして線形靜解析結果と実験値とを比較照合することで、相関の高いの解析モデルを構築していくことを目指します。このように、複雑な現象を簡単な線形靜解析に落とし込んで検討できるようにする取り組みは、実際の開発現場でFEMを有効に活用していくために重要なことだと考えています。

線形静解析に近似できる問題とは

しかしながら、どんな状況でも線形靜解析に近似できるわけではありません。まずは、本来非定常・非線形の現象を線形静解析に置き換えることができる問題について説明します。これに当てはまらない場合は、高度な解析をする必要があるかもしれません。もしくは、実測値との相関は無視して、あくまで相対評価と割り切る必要があります。

線形静解析に近似できる問題

  1. 材料は弾性域の範囲で使用する。
  2. 目に見えるほどの大きな変形はない。
  3. 振動モードの影響が少ない。

使用する材料にもよりますが、金属材料の場合、多くは弾性域での使用を前提とすることが多いと思われます。そのような場合は1を満足します。

2はその判断が難しいかもしれません。目に見えるほどの大きな変形でも線形解析に置き換えることもあります。要は力のバランスが、変形前の状態で考えても問題ないかどうかということです。計算力学用語でいえば幾何学的非線形性に関する話です。

3に関しては、発生する変形形態が、その構造自体が持っている振動モードには起因せず、単に入力された荷重によって変形するような変形形態を示すということです。比較的荷重の変動周波数が低い場合は静解析に近似することが可能と思われます。薄板物や衝撃的な荷重が入るものは静的に近似することは困難な場合が多いです。目安として荷重の変動周波数が、構造の固有振動数の1/3以下であれば静解析に近似可能と考えられます。

解析する製品の使われ方や試験の方法等をよく分析して、上記に当てはまるかどうかをしっかり検討しましょう。一見矛盾したことを言うようですが、ここで重要なことは完璧なモデルを作ろうと思わないことです。上記リストに多少当てはまらなくても、線形靜解析に近似してしまう場合もあります。それはそれで判断の方法はありますので・・。要は設計検討にFEM解析が活用できればよいのです。

目次

順次更新していきます。

  1. はじめに
  2. 実測値による検証作業のポイント
  3. ひずみゲージ貼付箇所の選定、計測方法
  4. 計測データの処理
  5. FEMモデルにおける荷重設定方法
  6. FEM解析結果の応力参照方法
  7. 実測値とFEM解析値との比較方法
  8. 実測値から逆算する荷重同定の方法


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