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5.FEMモデルにおける荷重設定方法|実測値による検証方法

本項では、荷重値を実測応力値から逆算する必要がある場合の荷重条件設定方法について説明します。主に荷重値が事前に予測困難な状況で用います。荷重値が事前に予測できるような場合は、ここで紹介するようなやり方をする必要はありません。

任意の荷重値をベクトルとして表現

図5-1

例えば、対象の機械装置に加わる荷重が、操作するオペレータの動作や周りの環境(例えば路面の状況など)に依存するような場合、荷重値そのものを予め予測することは困難なこともあります。そのような場合、FEMモデル上では空間座標であるx,y,zの3方向の荷重を同じ部位に別の荷重セットとして設定すると便利です。

この時、荷重値は単位荷重として何か設計上基準となる荷重値とすることが望ましいです。例えば、1Gの加速度により発生する荷重やアクチュエータの最大推力など。このような設定をすることで、3方向の荷重値にある係数を乗じたものの和として、任意の方向・大きさの荷重を表現することができます。これは荷重ベクトルの成分を荷重セットごとに分けて設定しているイメージです。

例えば荷重セット1としてx方向の荷重Fx、荷重セット2としてy方向の荷重Fy、荷重セット3としてz方向の荷重Fzを設定した場合、トータルの荷重ベクトルFは以下のように表現することができます。

・・・(5-1)

A,B,Cは各荷重セットに乗ずる係数

応力テンソルの足し合わせ

しかし、実際には各荷重の合力を式(5-1)により算出するというより、各荷重セットにより発生する応力の方に係数を乗じて足し合わせるという方法をとります。これは解析結果の操作なので計算を実行し直す必要がありません。

 ・・・(5-2)

[σ]:荷重ベクトルFにより発生する応力テンソル、[σ1]:荷重セット1により発生する応力テンソル、[σ2]:荷重セット2により発生する応力テンソル、[σ2]:荷重セット2により発生する応力テンソル、

今回は線形解析なので、各荷重セットにより発生する応力を上記のように足し合わせることが可能になります。ちなみに拘束条件は各荷重セットで同一である必要があります。また、式(5-2)では応力テンソルで足し合わせていますが、ひずみゲージ方向の応力成分でも構いません。

このようなやり方はNASTRANではsubcaseコマンドを用いて実現することができます。その他のソフトウェアでも同様の機能があると思います。

この方法の良いところは、先にも述べましたが係数A,B,Cの組み合わせを変更するだけなら計算をやり直す必要がないということです。ポスト処理で係数A,B,Cを変更することで、任意の荷重値に対する解析結果を作り出すことができます。これは実測値との合わせ込みの際に効力を発揮します。

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