2.実測値による検証作業のポイント|実測値による検証方法
実測値による検証作業の重要性
通常FEM解析モデルにはたくさんの近似が含まれていることが多いです。前項のように線形静解析に置き換えることもそうですし、本来ありえない空間への完全拘束や連続体を有限の要素に分割することもそうです。更には計算手法にも近似が入ることもあります。したがって、そうした近似が妥当なものなのかどうかを、実測値と照合することで確認することは非常に重要です。
意外と大変な実測値との検証作業
しかしこの実測値による検証作業というもは非常に手間がかかるのです。FEMの静解析ではある瞬間の状態しかモデル化できないため、時系列の実測データからある特定の高負荷な状態の時刻における応力を抽出したり、あるいは解析モデルの方も、実験で貼付したひずみゲージと同じ位置・方向の応力を抽出する必要があったりなどなど。やってみると解りますが非常に大変です。さらには実測値と合わない場合、解析モデルの方を修正してまた応力値を拾い直すなど、一回では終わらず、何度も繰り返すこともよくあります。このような作業をしっかりやれているでしょうか?
結局、実測値による検証作業が面倒なので、設計開発の現場ではあまり詳細に実施されず、大雑把に検証するのみで終わらせてしまうことも多いのではないでしょうか。しかし、これではいつになっても解析精度は向上せず、FEMを導入して活用はしているが、その効果があまり得られないということになってしまいます。最後にはFEMなんて使えないというレッテルが貼られてしまうかもしれません。
実測値による検証作業は大変なところもありますが、FEMを有効に活用するためには必要な作業です。本講座ではその方法の一例を紹介します。そして、最後には精度向上のための荷重同定作業を効率化する方法についても説明します。うまく実施できれば多くの分野において応用可能と思われますので参考にしていただければ幸いです。
実測値による検証作業のポイント
まずは実験で計測した応力値とFEMで解析した応力値を比較する場合のポイントについて、以下にリストします。
実測値による検証作業のポイント
- ひずみゲージ貼付箇所の選定、計測方法
- 計測データの処理
- FEMモデルの荷重設定方法
- FEM解析結果の応力参照方法
- 計測値とFEM解析値との比較方法、解析精度の評価
- 実験値から逆算する荷重同定の方法
基本的には、実測した状況とFEMで同じ土俵にするということだと考えます。同じ土俵とは、実験、FEMの両者が同じ条件になるように環境を整えて値を比較するということです。例えば応力の方向などは重要なファクターです。実験と異なる方向の応力値で比較しても意味がありません。
とりあえず、タイトルだけリストしてみました。このような内容について順次説明していきます。