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07-1.ランダム応答解析|動解析入門

ランダム応答解析の項では、解析的な考え方の他に統計的な概念を理解する必要があり、説明が長くなりそうなので数回に分けて掲載していきます。

ランダム応答解析とは

ランダム応答解析は入力荷重が定常的で単純な振動ではなく、いくつもの波形が複雑に重なり合ったランダムな振動に対する応答を解析する手法です。不規則応答解析とも言います。例えば不整地を走行したときに車両に加わる荷重などは、路面の状態に規則性がないので荷重として車両に入ってくる荷重も不規則なランダム波形になります。

もちろん過渡応答解析のように時系列の波形として解析することもできますが、そもそも不規則な波形をどのように評価するのかという問題があります。強度であれば応答のピークを読むのか、レインフロー解析でサイクルカウントするのか等々。そもそもランダムなので、実機テストにおいても同じ路面をまた走れば同じ波形が再現されるとは限りません。

このようなランダムな振動を取り扱うためには、統計的な手法を導入する必要があります。そのような解析が行えるのがランダム振動解析です。

ランダム振動解析では普段聞きなれないPSD応力の標準偏差など、独特の考え方があります。これらの考え方を理解していないと評価ができませんので、ここで簡単に説明していきたいと思います。

ランダムな振動とは

ランダム応答解析における振動波形は定常でエルゴード的であることを想定しています。エルゴード的とは、アンサンブル平均と時間平均が等しいということです。この辺の概念は少し解り難いので図で説明します。

同一の条件で測定されたn個の波形データをx1,x2・・・xnとし、時刻t1におけるそれぞれの値をx1(t1),x2(t1)・・・xn(t1)とします。x1(t1)〜xn(t1)の平均はアンサンブル平均と呼ばれます。同様にt2におけるアンサンブル平均、t3 におけるアンサンブル平均、〜tnにおけるアンサンブル平均と計算し、それぞれのアンサンブル平均が全て等しいとき、定常であると言います。

また、一方で一つの波形データにおける時間的な平均も計算することができます。そして時間平均とアンサンブル平均が等しいとき、エルゴード的と言います。エルゴード過程とも言います。エルゴード的であるということは、振動状態が空間的にも、時間的にも均一であることを意味します。平均の取り方としては、通常の平均だけでなく自乗平均まで考えることが多いです。

エルゴード的であれば、一つのサンプルについてのみ考えるだけで全体の統計量を推定することができるため、多くはエルゴード的であると仮定して統計量を求めることが多いです。

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