4.減衰自由振動|機械力学
計算モデル
1自由度減衰自由振動のモデルを図4-1に示します。今回から減衰要素が加わりました。減衰にはいろいろなモデルがありますが、最も基本的な”速度に比例した力を発生させる減衰モデル”を用います。
速度に比例した力を発させるという特徴から、減衰力はF=CVという関係があると予測できます。Fは減衰要素が発生する力、Vは速度、そしてCはそれらを関係付ける比例定数です。このCが減衰係数と呼ばれるパラメータになります。
式(4-1)がこの振動系を表す微分方程式になります。2項目が減衰によって発生する力を表しています。
・・・(4-1)
解法
また例によって式(4-1)の解を式(4-2)のように仮定します。今回は減衰項が加わるため、明らかに振動するとは限りません。減衰効果が非常に大きい場合、振動せずにスッと止まってしまうことも考えられますが、減衰が小さければ振動することになります。このような関数を表現するには式(4-2)のような指数関数が便利です。λが複素数ならオイラーの公式になり、振動する解になりますが、λがマイナスなら時間とともに0に近づいていくような関数になります。
・・・(4-2)
さて、また例によって微分していきます。一回微分で式(4-3)。これは速度を表します。
・・・(4-3)
2回微分で式(4-4)。これは加速度を表します。
・・・(4-4)
式(4-2)、式(4-3)、式(4-4)を式(4-1)に代入します。
・・・(4-5)
整理してλについて解きます。
・・・(4-6)
・・・(4-7)
・・・(4-8)
ここで式を解りやすくすることと、その特性を理解しやすくするために、各項を物理的意味において重要なパラメータに置き換えます。
まず、式(4-7)のルートの部分。このルート内がマイナスかプラスかにより、式が複素数になるか実数になるか(言い換えれば振動するか、しないか)決まりますので、その間のルート内が0になるという状況は物理的に非常に重要な局面になります。この時のCを計算してみます。
・・・(4-9)
・・・(4-10)
この重要な局面を担うCには臨界減衰係数という名前が付いています。振動するかしないかを決めるCの臨界値という意味です。これを式(4-11)のように置き換えます。
・・・(4-11)
さらに現在の減衰係数と臨界減衰係数との比を式(4-12)のように置き換えます。ζは減衰比と呼ばれ、現在の減衰係数が臨界減衰係数に対してどのくらいかを表すパラメータになります。
・・・(4-12)
1自由度非減衰振動のところで説明した固有角振動数を式(4-13)のように置き換えます。これも共振現象に関わる非常に重要なパラメータです。
・・・(4-13)
これらのパラメータを色々計算すると、式(4-8)の各項を物理的意味において重要な各パラメータに置き換えることができます。
・・・(4-14)
式(4-13)と式(4-14)を用いて、式(4-8)を置き換えたものが式(4-15)です。
・・・(4-15)
少し整理して式(4-16)を得ます。
・・・(4-16)
式(4-16)を式(4-2)に代入すると減衰自由振動の解が得られます。しかし、λが2つありますので、それぞれの解を足し合わせたものが最終的な解となります。
・・・(4-17)
・・・(4-18)
・・・(4-19)
ここで、ルート内の項がプラスになるかマイナスになるかで場合分けをして、それぞれの場合によりどのような振動をするのか考察してみます。
ルート内の項が0以上の場合(ζ>=1の場合)
言い換えれば式(4-18)、式(4-19)が実数になる場合です。さらにその物理的意味は、減衰効果が大きすぎて振動することができない状況ということになります(過減衰の状態という)。
ルート内の項が0以上であるので、以下のように立式できます。
・・・(4-20)
・・・(4-21)
ζは式(4-12)のように現在の減衰係数が臨海減衰係数に対してどのくらいかを表しますので、それが1より大きいということは、臨海減衰係数より大きな減衰が与えられている状況となります。 このときの振動の様子を調べてみましょう。
式(4-17)でt=0のときとt→∞のときを考えます。t=0のときは初期状態における変位となります。t→∞のときは、λが実数でマイナスの値であることを考慮すると、xは初期状態の変位(X1+X2)から0に向かって徐々にく小さくなる波形を示すことが予測されます。
⇒ ・・・(4-22)
⇒ ・・・(4-23)
これをグラフに表せば、図4-2のような波形となります。
ルート内の項が0より小さい場合(ζ<1の場合)
言い換えれば式(4-18)、式(4-19)が複素数になる場合です。さらにその物理的意味は、式(4-17)がオイラーの公式と同等の形式になるので振動現象を生ずる状況ということになります。
ルート内が0より小さいということで以下のように立式できます。
・・・(4-24)
・・・(4-25)
ζは式(4-12)のように現在の減衰係数が臨海減衰係数に対してどのくらいかを表しますので、それが1より小さいということは、臨海減衰係数より小さな減衰が与えられている状況となります。
式(4-18)、式(4-19)が複素数であることを解りやすくするために、虚数単位iを用いて下の式のように書き改めます。ルート内の-1をiを用いて外に出す形になるので、ルート内は-1が乗じられていることに注意してください。
・・・(4-26)
・・・(4-27)
ここで、計算を簡単にするために、式中の項をまとめて、あるパラメータに置き換えます。
・・・(4-28)
・・・(4-29)
式(4-28)は複素数の固有角振動数の実部で、後で解りますが振動の減衰性を表すパラメータです。式(4-29)は複素数の固有角振動数の虚部で、減衰も考慮した固有角振動数です。 これらのパラメータを用いて式(4-26)、式(4-27)を書き改めたのが下式です。
・・・(4-30)
・・・(4-31)
λは互いに共役な複素数となります。これらを式(4-17)に代入すると、共役な複素数の和になるので全体としては実数になることに注意してください。
・・・(4-32)
・・・(4-33)
・・・(4-34)
ここでオイラーの公式を適用します。
・・・(4-35)
・・・(4-36)
式(4-35)と式(4-36)を式(4-34)に代入し、cosとsinについて整理します。
・・・(4-37)
cosとsinの係数がやや複雑なので以下のように置き換えます。
・・・(4-38)
・・・(4-39)
・・・(4-40)
さらに初期条件を与えて、より具体的な解を求めていきます。初期条件には非減衰自由振動の時と同様に初期変位と初期速度を用います。 速度を求めるために式(4-38)を微分します。
・・・(4-41)
・・・(4-42)
・・・(4-43)
ここで、初期条件を与えます。
式(4-38)にt=0を代入します。XAだけが残るのでこれをt=0の時の変位ということでx0とします。
⇒ ・・・(4-44)
式(4-43)にt=0を代入します。さらに式(4-44)を用いてXAを置き換えます。これをt=0の時の速度ということでV0とします。
⇒ ・・・(4-45)
・・・(4-46)
これをXBについて解きますと
・・・(4-47)
式(4-44)と式(4-47)を式(4-38)に代入します。
・・・(4-48)
さらに非減衰自由振動の時にも出てきた公式を用いて、位相との関係も解るようにします。
・・・(4-49)
・・・(4-50)
・・・(4-51)
以上、減衰自由振動の最終的な解は式(4-49)となります。かなり詳しく説明したので式の数がかなり多くなってしまいました・・。
さて、この時の振動の様子を調べてみましょう。図4-3にζ=0.1、0.2、0.3の時の振動波形を示します。ζが大きくなるにしたがって(減衰が大きくなるにしたがって)、二つ目の山以降がどんどん小さくなっていくことが解ります。さらに減衰が大きくなると先に説明したζ>=1の状態になります。
また、式(4-28)のσは振動の減衰性を表すと先に説明しましたが、このパラメータを含むの項についてプロットするとその性質がよくわかります。図4-3中の点線ではζ=0.1の時のを示しています。これを見ると、ζ=0.1の時の振動波形の山のピーク部分を結んだ曲線になることが確認できます。つまり、時間と共にどのくらい振幅が小さくなっていくか、という振動の減衰性を表していることになります。
振動周期についてはζが大きくなるにつれて長くなっていきます。これは振動波形の山の間隔がζが大きくなるにつれて広くなっていくことから確認できます。つまり振動周波数は減衰が大きくなると低くなるということを意味しています。
今回の内容で重要な点は以下です。箇条書きにして確認します。
- 固有角振動数λが実数の場合は過減衰の状態となり、振動現象を生じない。
- 固有角振動数λが複素数となる場合は振動現象を生ずる。
- 複素数の固有角振動数λにおける実部は減衰性を表す。
- 複素数の固有角振動数λにおける虚部は減衰を考慮した固有角振動数を表す。
- 減衰を考慮したした固有角振動数は、ζが大きくなるにつれて(減衰が大きくなるにつれて)小さくなる。
ちなみに振動解析においては、固有値の√が固有角振動数になります。さらに2πで割ったものが固有振動数になります。固有値というと数学的な意味合いが強いですが、振動解析において、固有値と固有角振動数あるいは固有振動数は同じ意味で使っていることが多いです。