3.RANS|流体解析入門
RANSは設計開発現場で最も活用されている乱流モデルであるため、ここで少し詳しく説明します。
レイノルズ分解
乱流におけるある点の速度の時間的変化は不規則になりますが、RANSでは速度の平均成分と変動成分の和として下式のように表します。
・・・(3-1)
u:流速、u(上バー付):速度の平均成分、u’:速度の変動成分
図で説明すると下図のようになります。
式(3-1)を各方向に展開して縮約表記すれば下式になります。
・・・(3-2)
速度だけでなく圧力pについてもこのような分解を行います。pについてはスカラー値ですので方向成分はありません。
・・・(3-3)
p:圧力、p(上バー付):圧力の平均成分、u’:圧力の変動成分
このように速度や圧力を平均成分と変動成分に分解することをレイノルズ分解と呼びます。
レイノルズ平均
RANSでは平均的な流れを取り扱います。よって基礎式の変数を時間平均して定式化していきます。このような処理をレイノルズ平均と呼びます。
具体的な定式化については次項で説明しますが、ここでは平均操作の手続きに関して整理しておきます。
あるパラメータをf、gとしたとき、レイノルズ分解は下式になります。 ここで、上バー付は平均されていることを表し、ダッシュ(´)付は変動成分を表します。
・・・(3-4)
・・・(3-5)
この時、平均操作に関して以下の関係があります。
・・・(3-6)
・・・(3-7)
・・・(3-8)
・・・(3-9)
これらの関係を使って以下で定式化していきます。
レイノルズ平均ナビエ-ストークス方程式
1項で説明しましたが、改めて非圧縮性のナビエ-ストークス方程式を下式に示します。
・・・(3-10)
上式(3-10)に式(3-2)と式(3-3)を代入し、全体の平均をとります。この処理がレイノルズ平均ですね。
・・・(3-11)
式(3-6)〜(3-9)の関係を使って展開しますと、最終的に下式のようなレイノルズ平均されたナビエ-ストークス方程式が得られます。
・・・(3-12)
通常のナビエ-ストークス方程式に対して、流速や圧力が全て平均化されたものに置き換わったのと、右辺第3項が新たに追加されたことが異なります。このようなレイノルズ平均されたナビエ-ストークス方程式を解く手法をRANSと呼びます。
連続の式についても同様にレイノルズ平均を施します。
式(1-6)に式(3-2)を代入し、全体の平均をとります。
・・・(3-13)
これについても展開して整理しますと、最終的に下式のようなレイノルズ平均された連続の式が得られます。
・・・(3-14)