円孔を有するプレートの応力解析|解析事例
線形静解析の事例として円孔を有するプレートの応力解析をやってみます。構造解析分野において、線形静解析はもっとも基本的な解析機能です。
今回は単に解析するだけではつまらないので、円孔の応力集中係数を求めて理論値と比較してみたいと思います。
解析モデル
解析対象と条件
解析対象は下図のようなプレートとしました。これを5000Nで引張った状況を解析します。
- 寸法:幅50mm、長さ100mm、厚さ2.3mmm、中心にφ20穴
- 材質:鋼を想定して、弾性率E=2.1×10^5[MPa]、ポアソン比ν=0.3
- 荷重:長手方向に5000Nで引張る
解析モデル
対象性を利用して1/4モデルとしました。対象条件の設定方法はこちらを参照してください。要素はCQUAD4と呼ばれる四角形1次要素を使用します。
単位系はmm・kg・s単位系を使用することとします。したがって応力単位はmN/mm^2となりますが、文中では桁が大きくなって読みづらくなるので、N/mm^2の単位で表記します。
解析結果
円孔部の応力集中係数を求めてみる
下図はミーゼス応力を表しています。円孔の応力集中部では159N/mm^2の応力が検出されました。円孔部の有効断面から計算される平均応力は72.5N/mm^2ですから、約2.19倍の応力集中係数αとなりました。
一般に円孔の応力集中係数は3と言われますが、今回の結果はα=2.19と少し小さい値となっています。これは解析モデルの精度の問題ということではなく、理論解を求める時の前提条件と今回のモデルが合致していないためです。
有限の大きさの板に穴が開いている場合は、以下の線図により応力集中係数を求めることができます。α=3というのは、実は板が無限大の大きさの場合(b=∞→a/b=0)になります。今回の場合、2a=20、2b=50ですのでa/b=0.4となり、以下の線図よりαを読むとα=2.25くらいになりますでしょうか。かなり良い精度でFEM計算値と一致していることが確認できました。
計算時の注意
ここで注意しなければならないことがあります。CQUAD4要素は一般によく使われますが、計算時に何も設定しないと、要素中心の応力しか算出されません。今回の解析のように要素コーナー部の応力を参照する必要がある場合、正しく計算することができません。
上記の解析結果では応力の出力指定にSTRESS(PLOT,CORNER) = ALLと設定しました。これにより要素の形状関数を利用して要素コーナー部に応力の解析結果を外挿して求めてくれます。
下図は応力の計算結果の出力指定を通常のSTRESS(PLOT) = ALLとした場合の解析結果です。この場合の円孔の応力集中部では141N/mm^2の応力が検出されました。集中係数αは1.94です。先ほどの値より小さい値になっていることが確認できます。
STRESS(PLOT) = ALLとした場合の解析結果
- 円孔部応力:141N/mm^2
- 応力集中係数α:1.94
補足
ちなみに、CORNERの指定はCQUAD4のみ有効で、CQUAD8等の2次要素では無視されます。そもそも2次要素では指定しなくともコーナー部の応力を求めてくれます。
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