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タイトルCAE導入プロジェクトの方針をめぐって
記事No1131
投稿日: 2011/05/16(Mon) 00:42
投稿者リトルバード
はじめまして、リトルバードと申します。ホームページは時々興味深く拝見させていただいておりました。CAE経験は約2年です。

私は流体機器メーカーに勤めておりまして、主要製品のある重要な部品のCAEを使用した設計法を目指すプロジェクトを、CAEコンサル業者の支援を受け、主導しています。

まず部品の実際の挙動をシミュレーションで再現できるようにするところから始めました。これまで実機の挙動との合わせこみに徹していたのです。現状、実機の挙動を完全に再現しきる事は難しく、課題を残しています。

今後のプロジェクトの方針を決める段階に入り、CAEコンサル業者からはそろそろ実機との合わせ込みのような後追い的な解析ばかりに徹するのではなく、実機の最適化を試しにやってみても良い段階ではないかという意見を頂いています。
私はこの意見に賛成しています。しかし、上司はこの意見に懸念を示しており、まだシミュレーションの精度が不十分なのに、シミュレーション上で最適化を図ってみたところで、その答は信用できるものではないと言っています。

確かに上司の意見も理解できるのですが、このプロジェクトは社内では「難しそうな事してるけど、結局それがどう役立つの?」というようなちょっとイマイチな評価もされていたため、私としては早く実用化したい、CAEはこのように役立てる事ができると社内に示したいという思いが強いのです。

結局、私の中では実機の最適化を試しにやってみるけど、シミュレーションの精度を上げる研究も今後も継続していくという方針で落ち着いているのですが、上司は失敗する事を恐れているのか、まだ納得がいかない様子でいます。

なんとか上司を説き伏せたいのですが、何かアドバイスを頂戴する事はできませんでしょうか。長文失礼致しました。

タイトルRe: CAE導入プロジェクトの方針をめぐって
記事No1132
投稿日: 2011/05/16(Mon) 22:36
投稿者JIKO
完全に実機の状態を再現することは難しいので、まずはどの程度の精度が要求されるのかについてはっきりさせる必要があると思います。すでにそれをはっきりさせて、つまり目標の精度があるのかもしれませんが・・それに及ばなくて苦労されているということでしょう。

現在の解析精度にもよりますが、私も上司の意見に近いかもしれません。もし今、ある程度の傾向が再現できているのであれば、とりあえず設計検討に移行しても問題ないとは思います。しかしその傾向すら再現できいないのであれば、その状態で最適化をしても無駄になってしまうかもしれません。前者であれば解析目的をはっきりさせて、解析することにより得られる結果がどのように有効かについてしっかり説明できればよいのではないでしょうか。

またその他一般的によくやるのが、まずは簡単な現象から始めるというもの。今一番解決したい問題はあると思いますが、そういう現象は複雑な影響が絡むことが多く、CAEで現象をとらえることは非常に難しいということはよくあります。なのでまずは簡単な現象から解析して、それを実際の設計検討にこんなに役に立つのですよとアピースする。簡単な現象でもやり方によっては設計に有効な情報を得ることができます(流体がご専門なら流量や圧力を評価するなど)。モデル化や設計への展開にある種のテクニックが必要なこともありますが、まずは有効なアウトプットの実績を作ってしまうことが大切かと思います。

そのような事例を積み重ねて徐々に複雑な現象に展開して行き、本当に再現させたい現象の解析技術を構築していく方法です。事例が増えれば解析テクニックや現象への理解も進みますし、よいヒントもえら得るかもしれません。そして実績があれば上司やその他の人の理解も得やすいと思います。

内部事情がよく解らず回答していますので的外れだったらすみません。

タイトルRe: CAE導入プロジェクトの方針をめぐって
記事No1133
投稿日: 2011/05/17(Tue) 00:26
投稿者ki   <ki.iijima@gmail.com>
参照先http://www.i-juse.co.jp/statistics/xdata/sympo18_tatebayashi_slide.pdf
こんばんは。
某精密機器メーカーで解析と解析推進をやってます。

まずリトルバードさんの会社はきちんと合わせ込みをしていてとても素晴らしいと思いました。
うちはなかなか…。

さて私でしたらどんどん最適化をしてみます。
CAEの推進ってまずは後追い、つぎに並走、最後にCAE先行になると思います。
後追いで満足しなくなったら並走のフェーズに入るべきです。
せっかくCAEは試作費用がかからないのですからどんどん計算してアウトプットを出します。
もちろん現物での製品開発も従来同様のやり方で進んでいるでしょう。
ここで多少なりとも解析の結果が役に立て(例えば壊れやすいところを事前に把握)ば御の字ですし、
万が一全然役に立たなくてもまぁリトルバードさんの工数が無駄になるくらいですから。

ところで精度不十分といっても傾向(善し悪しの順序が逆転しない)くらいは出ているのですよね?
もしかするとシビアな精度を追うよりも製品の使われ方による影響を小さくするようなことを
CAEでやったほうがいいような気もします。品質工学です。参照URLの31ページあたりをどうぞ。

事情を知らずに知ったかぶりで書いてしまいました。

#蛇足ながらコンサル屋さんは成果を出さないと契約が継続されない場合があります。
#契約のために、もしかすると御社の身の丈以上の成果をぶち上げるために
#「そろそろ製品開発で最適化やろう」という場合もあるかもしれません。
#ないとは思いますが一応気をつけて下さい。

タイトルRe: CAE導入プロジェクトの方針をめぐって
記事No1134
投稿日: 2011/05/17(Tue) 01:40
投稿者GG
今の時点での最適化はお勧めできません。
すぐに成果が必要という事でしたら、
まずはNGと思われる箇所を定性的に見つけ出して、
試作・実験までに手当てする目的で使った方が良いと思います。

最適化は上記の目的よりもかなりハードルが高いです。
なぜならば、最適化は計算上不要な部分を取り去るので、
「結果値の低いところまで全て精度よく計算できる」
必要があるからです。

たとえば私の場合、強度の最適化ならば、
下記2つの前提条件を満たさないと実施しません。

1)解析精度
部品全体満遍なく最低20点以上実験と比較して合っている。
相関係数0.9を切っているものは最適化しない。
(流体解析だとこの条件は厳しすぎるかもしれません。)

2)解析手法のロバスト性
形が似ていない部品を最低3個計算して解析精度が確保できる。
3個は本当の最低値で、本当は5個以上欲しいです。

もう一つ。
「最適化」と言う言葉は誤解を招きやすく、
「特化」と言った方が正しい認識です。
特定入力に耐える形状へ特化するので、
それ以外の入力には逆に弱くなります。

なので下手に最適化すると、不具合が激増します。
(それで酷い目にあった・・・orz)

タイトルRe: CAE導入プロジェクトの方針をめぐって
記事No1135
投稿日: 2011/05/17(Tue) 10:09
投稿者porcaro
設計手法の確立を目指すのであれば、「CAEでできること」と「実験ででしかできないこと」を切り分けて考える必要があると思います。

最適化をやる場合も、「×××の現象については精度90%ですが、○○○の現象については精度10%です」といった説明をしてあげるのが良いかと思います。

「できること・できないこと」「有効な部分・有効でない部分」を説明し、「今できないこと・有効でない部分」に対しての改善可能性についてを話せば上司もなんらかの決断をしてくれるでしょう。

タイトルRe: CAE導入プロジェクトの方針をめぐって
記事No1136
投稿日: 2011/05/18(Wed) 00:25
投稿者シママロ
参照先http://d.hatena.ne.jp/shimamaro/20110517/p1
こんにちは。

同様なお悩みを、ソフトベンダーの立場からいろいろ見聞きして参りましたので、リトルバードさんのお気持ちも、上司の考えもどちらも、よくわかります。ですが、両者の議論に掛け違いがあるように感じました。

設計最適化の絶大な効果もある一方で、コト”最適化”という言葉や実際の使い方に関する誤解・無理解による悪例も、実はあります。決して脅かしているわけではありません。説き伏せるのではなく、リトルバードさんの考える”最適化”と、上司の期待する”最適化”について、ぜひもっと突っ込んだ議論をして欲しいと感じました。精度だけの問題ではないのです。必ずや得ることがあるはずです。まずは、それが一番の近道です。

ご指摘したい点はいくつかあるのですが、結論的には、最適化ではなく、実験計画法に代表されるサンプリング手法を試みることを、120%お勧めいたします。実務上も、上司の方を”説得”できる可能性としても、格段に高くなるでしょう。最適化は、その次のステップで十分というのが、私のアドバイスです。

私の意図することを、こちらの欄に書くにはたいへん長いので、先ほど私のブログに
「CAE、合わせ込み精度、最適化に纏わる悩み」→ http://d.hatena.ne.jp/shimamaro/20110517/p1

と題して、回答を掲載させていただきました。関連する記事もございますので、参考までにリンクを張ってあります。

どうか、プロジェクトを円滑に進められますように。

タイトルRe: CAE導入プロジェクトの方針をめぐって
記事No1138
投稿日: 2011/05/20(Fri) 23:39
投稿者リトルバード
> JIKOさん、kiさん

当初は実機との合わせこみを疎かにしており、いきなり解決したい問題に取り組んでいました。しかし、中々成果が上がらなかったため、JIKOさんのおっしゃるように、簡単なモデルから実際の挙動と解析の比較検証をコツコツと積み重ね、解析の妥当性を確かめながら、本当に解きたい問題を扱えるようなるのを目指すという方針に変えました。しかし、課題は少なからず残っており、まだ道半ばといった感じです。
そのため、コンサル業者から「最適化やろう」という意見が挙がったのは、若干唐突な感はありました。上司はまだ早いだろうと感じているのだと思います。


> GGさん

解析の精度の検証、非常に厳しい評価をされているのですね。うちだとそこまでやれるかなといった感じです。
「最適化」の認識の件、確かにその通りですね。注意しておきます。


> porcaroさん

はい、CAEでできる事・できない事は明確にしておくべき、というのは私も同意見です。


> シママロさん

「最適化ではなく、実験計画法に代表されるサンプリング手法を試みることを、120%お勧めいたします。」というのはどういう意味なのでしょうか。ちなみにコンサル業者から勧められているのは、実験計画法に基づきいくつもの仮想試作(シミュレーション)を行い、最も優れた設計条件を導き出すというものです。それをコンサル業者は最適化と呼んでいるようでした。私もそのように受け取っているのですが、この解釈は間違っているのでしょうか、それともシママロさんも同様の事をお勧めしてくださっているのでしょうか。


> みなさま

「実機の挙動を”完全に”再現しきる事は難しく」という表現を用いていましたが、少し訂正致します。最も解決したい問題・現象を再現するところまでには、まだ解析の技術が達していないという事です。完全な再現は本来無理であるということは理解しております。

結局、現状の弊社の解析技術で扱えそうなものを対象に試しに最適化をやってみようかという事になり、上司の了承は得られました。

こちらの事情がうまく伝える事ができず、お答えづらかったように思うのですが、貴重な数々のアドバイスありがとうございます。

タイトルRe^2: CAE導入プロジェクトの方針をめぐって
記事No1139
投稿日: 2011/05/21(Sat) 22:55
投稿者シママロ
参照先http://d.hatena.ne.jp/shimamaro/20110521/p1

> > シママロさん
>
> 「最適化ではなく、実験計画法に代表されるサンプリング手法を試みることを、120%お勧めいたします。」というのはどういう意味なのでしょうか。ちなみにコンサル業者から勧められているのは、実験計画法に基づきいくつもの仮想試作(シミュレーション)を行い、最も優れた設計条件を導き出すというものです。それをコンサル業者は最適化と呼んでいるようでした。私もそのように受け取っているのですが、この解釈は間違っているのでしょうか、それともシママロさんも同様の事をお勧めしてくださっているのでしょうか。

回答:そういうことでしたか。最適化アルゴリズムを使う最適化と勘違いしておりました。”最適化”にもいろいろな方法がありますからね。上記の方法は十分に実施する価値あると思います。加えて、実験計画法を使うと、変数の寄与率が分かります。これだけで十分という方もいるぐらい重要な情報です。

ちなみに、私のブログへのご質問への回答という形で、「CAEの精度向上のためのパラメータ同定」という記事をアップいたしました。